
製造業のトレンド|生成AI・フィジカルAI・人手不足対応で変わる現場
2026-09-25
FTO調査の技術要素整理・関連特許調査・対比表作成をAIで効率化
2026-10-10PCT国際出願の翻訳・先行技術調査・書類作成を生成AIで効率化
PCT(Patent Cooperation Treaty)国際出願は、1通の出願で多くの国に同じ出願日を確保できる便利な制度です。
ところが、いざ実務に入ると各国向けの翻訳や先行技術調査、明細書やクレームの作成が積み重なり、時間も費用もかさんでいきます。
こうした負担の大きい工程こそ、生成AIの出番です。
翻訳から各国移行の判断まで、PCT実務のどこにどう生成AIを活かせるのかを見ていきましょう。
PCT国際出願の実務は、翻訳・先行技術調査・書類作成・各国移行判断の各段階で生成AIを使って効率化できる
PCT国際出願の実務は、翻訳・先行技術調査・出願書類の作成・各国移行の判断という段階に分けると、それぞれに生成AIの使いどころが見えてきます。
PCTは、1通の国際出願で150か国を超える国に特許保護を求められる制度です。
出願そのものは1通でも、その後には各国向けの翻訳、多数の国を対象にした先行技術調査、各国制度に合わせた書類の整備、そしてどの国へ進むかの判断が続きます。
いずれも扱う言語と国の数が多く、担当者の工数が集中しがちです。
生成AIは、こうした「量が多く、言語をまたぐ」作業を得意とします。
下訳の作成、文献の横断的な確認、下書きづくりのどれも、スピードを上げやすいのが強みです。
以降では、翻訳、先行技術調査、出願書類の作成、各国移行の判断の順に、生成AIの具体的な使い方と注意点を見ていきます。
参考記事:WIPO|Introduction to the Patent Cooperation Treaty (PCT)
なぜ今、PCT国際出願の実務に生成AIを取り入れるのか
PCT実務に生成AIを取り入れる動きが広がっているのは、出願件数の増加、多言語対応の負担、そしてWIPO自身のAI活用という3つの流れが重なってきたためです。

それぞれの理由について掘り下げます。
出願件数が増え続け、翻訳・調査・書類作成の工数が積み上がっているため
PCT出願の件数は、近年ゆるやかに増え続けています。
PCTを運用する世界知的所有権機関(WIPO)によると、2025年のPCT国際出願は約27万5,900件に達し、前年から0.7%増えて2年連続の増加となりました。
件数が増えれば、翻訳も先行技術調査も書類作成も、その分だけ積み上がっていきます。
限られた知財担当者や開発者でこの量をこなすには、工数のかかる工程をいかに軽くするかが避けて通れない課題です。
参考記事:WIPO|International Patent Applications Rose in 2025(PCT News)
多言語・多制度への対応が実務のボトルネックになりやすいため
PCT出願は国際段階のあと、権利化したい国ごとに国内段階へ進みます。
その際には、各国が求める言語への翻訳や、国ごとに異なる様式・記載要件への対応が欠かせません。
対象国が増えるほど、翻訳と各国対応の負担は膨らみ、担当者の作業も滞りがちです。
言語も制度も国ごとに異なります。
この構造そのものが、実務の詰まりを生む一因です。
参考記事:WIPO|PCT Summary for New Users
WIPOも公式にAI翻訳ツールを提供し、AI活用が前提になりつつあるため
AIの活用は、いまや民間だけの動きではありません。
WIPO自身も、特許文献の翻訳を支援するAIツールなどを公式に提供しています。
制度を運用する側がAIツールを提供している事実は、AIを前提に特許業務を組み立てる流れが広がっている何よりの証拠です。
翻訳への生成AI活用|各国向けの出願書類を速く正確に仕上げる
PCT実務でとくに負担が重いのが翻訳であり、生成AIを最初に取り入れやすい工程でもあります。
速度と正確さの両立を握るのは、下訳・用語のブレ対策・人による確認の3点です。
特許翻訳に特化した生成AIで、明細書やクレームの訳を速く正確にする
特許文献の翻訳は、一般的な文章の翻訳とは勝手が違います。
技術的な内容と法的な表現が入り混じり、タイトルや要約、クレームまで正確さが問われるからです。
WIPOが提供するWIPO Translateは、こうした特許文献の翻訳に最適化されたAIツールです。
日本語や中国語、英語など17言語に対応し、特許データベースのPATENTSCOPE上で無料で使えます。
特許に特化した翻訳AIを下訳に回せば、一から訳す場合に比べて作業の初速がぐっと上がります。
参考記事:WIPO|WIPO Translate
用語集や過去訳を学習させ、専門用語や表記のブレを抑える
翻訳でやっかいなのが、同じ用語が訳ごとに揺れてしまう現象です。
自社の用語集や過去の出願で使った訳語を生成AIに学習させておけば、専門用語や表記のばらつきをかなり抑えられます。
訳語を一貫させておくことは、クレームの解釈や権利範囲のぶれを防ぐうえでも効いてきます。
▼自社に合わせた生成AIの作り方について詳しく知りたい方はこちら
ファインチューニングとは|自社に最適化された生成AIの構築
機械翻訳の結果は人が確認し、権利範囲に関わる表現を詰める
生成AIの翻訳は速い一方で、そのまま使うのは避けたほうが安全です。
クレームの一語の訳し方が権利範囲を左右することもあり、最終判断は人の目に委ねるべきでしょう。
AIに下訳を任せ、権利範囲に関わる表現は担当者や専門家が詰める分担にすれば、速さと正確さの両方に目を配れます。
▼海外展開時の調査と翻訳について詳しく知りたい方はこちら
国際特許検索とは|海外展開の失敗を防ぐ生成AI時代の調査戦略
先行技術調査への生成AI活用|多言語の文献を横断して抜け漏れを減らす
先行技術調査は、対象言語も件数も多く、生成AIによる効率化の効果が出やすい工程です。
検索の広げ方、多言語対応、調査の初速という3つの視点で掘り下げていきます。
セマンティック検索(言葉そのものではなく、意味が近いものを探す検索)で、キーワードに依存せず関連文献を広く拾う
従来の特許調査は、キーワードや分類の指定に頼る部分が大きく、表現の違いで関連文献を取りこぼすことがありました。
生成AIを使ったセマンティック検索(言葉そのものではなく、意味が近いものを探す検索)なら、言葉の一致だけでなく意味の近さで文献を探せます。
たとえば、「悪天候によって発生した事故について教えて」と検索した際に「悪天候」と意味的に近い「豪雨」や「強風」を含む表現で関連事故報告書がヒットします。
これがセマンティック検索の特徴です。このようにキーワード検索と組み合わせれば、調査の抜け漏れも減らせるでしょう。
▼先行技術調査へのAI活用について詳しく知りたい方はこちら
製造業における先行技術調査の方法とAI活用戦略|2026年最新動向
多言語の特許文献をAI翻訳で横断し、各国の公知資料を確認する
国際出願では、日本語や英語だけでなく、中国語や韓国語など各国の特許文献も確認したい場面が増えます。
AI翻訳を挟めば、外国語の文献も内容を押さえながら横断的にチェックできます。
各国の公知資料は、できるだけ早めに押さえておきたいところです。
それが、後の拒絶理由や権利化の見込みを読み解く布石になります。
検索式づくりや結果の要約をAIで支援し、調査の初速を上げる
調査では、検索式をつくる作業や、大量の検索結果を読み解く作業に、どうしても時間がかかりがちです。
生成AIに検索式の候補を出させたり、ヒットした文献の要点を要約させたりすれば、初動はぐっと速められます。
生成AIが特許公報の技術内容まで読み込んでマッピングすれば、まだ出願の少ない領域(ホワイトスペース)を仮説として洗い出せます。
出願の狙いどころを探る材料にもなるでしょう。
最終的な取捨選択は人が担い、下準備をAIに任せる形が現実的です。
▼特許調査の進め方について詳しく知りたい方はこちら
特許調査とは|効率的な進め方を徹底解説
出願書類の作成への生成AI活用|明細書・クレームの下書きを効率化する
明細書やクレームの作成は、生成AIに下書きづくりを任せ、仕上げを人が担うことで効率化できます。
下書きの作成、対比表づくり、記載要件のチェックという3つの使い方を取り上げます。
発明の要点から明細書・クレームの下書きを作り、たたき台にする
明細書やクレームは、ゼロから書き起こすと時間のかかる書類です。
発明の要点や技術的な特徴を入力すれば、生成AIがたたき台をすばやく用意してくれます。
たたき台はそのまま提出できるものではありませんが、加筆・修正の起点があるだけで作成の負担は大きく変わります。
▼AIによる特許業務の効率化について詳しく知りたい方はこちら
AIで特許調査のコストを1000分の1に|活用戦略を詳しく解説
クレームチャートや先行文献との対比表の作成を支援する
出願や権利化の検討では、クレームと製品、あるいはクレームと先行文献を対比する表づくりが欠かせません。
こうした対比表の下書きも、生成AIに関連箇所を抽出させて整理させれば、作成の手間はぐっと軽くなります。
人はAIがまとめた表を確認し、対応関係が妥当かどうかの見極めに専念できます。
各国の様式・記載要件に沿っているかのチェックに使う
各国の国内段階では、様式や記載要件が国ごとに異なりますが、生成AIに要件と書類を突き合わせてもらえば、抜けや形式の不備にも気づけます。
ただし、要件そのものが変わる場合もある点には注意が必要です。
最終確認は、最新情報と専門家の目で行うことを前提にしておきたいところです。
各国移行の判断への生成AI活用|移行先を絞る材料をそろえる
どの国へ移行するかの判断も、関連情報を生成AIで整理すれば、検討材料をそろえられます。
調査報告の整理と競合状況の可視化、この2つの使い方が中心になります。
国際調査報告や関連特許をAIで整理し、権利化の見込みを検討する
国際段階では、国際調査報告や見解書を通じて、特許性の見通しをある程度つかめるはずです。
これらの内容や関連特許を生成AIで整理すると、権利化の見込みを検討する材料が一気にそろいます。
見込みの高い国に絞って移行を進めることは、費用のかけ方を考えるうえでも理にかなっています。
各国の競合の特許状況をパテントマップで可視化し、優先順位づけに使う
移行先を絞るには、各国の市場や競合の特許状況を把握しておきたいところです。
生成AIによるパテントマップの自動生成を使えば、競合の出願傾向や技術の集中領域が一目で見渡せます。
特許情報に市場や競合の動きを掛け合わせて読み解くのが、IPランドスケープという考え方です。
これを使えば、出願人ごとの動きや時系列の推移から、次に狙う国や領域のヒントが浮かび上がります。
こうした材料をもとに、どの国を優先するかの順位づけへ進めます。
▼生成AIを使ったIPランドスケープについて詳しく知りたい方はこちら
生成AI×IPランドスケープで研究開発と事業戦略を接続する
エムニの取り組み|知財業務を効率化する生成AI活用
エムニは、製造業の現場とITをつなぐ実装力を強みに、知財業務への生成AI活用に取り組んでいます。
翻訳・調査・書類作成に関わる具体的な取り組みを紹介しましょう。
特許翻訳特化型LLMで、多言語の翻訳精度を高める
エムニは、特許翻訳に特化した言語モデルの開発に取り組んできました。
ファインチューニングを用いた特許翻訳特化型LLMでは、汎用モデルや既存の翻訳モデルを上回る性能を達成しています。
特許文献に特化して精度を磨くことは、国際出願の翻訳工程の効率化につながります。
▼特許翻訳特化型LLMの取り組みについて詳しく知りたい方はこちら
ファインチューニングを用いた特許翻訳特化型LLMの開発
パテントマップの自動生成で、調査の時間とコストを圧縮する
特許調査やパテントマップの作成を外部に委託すると、数百万円の負担・1カ月規模の調査期間になることも少なくありません。
生成AIを使えば、大量の特許明細書を読み込んで技術内容を整理し、マップや深掘りレポートのたたき台にまとめるところまでを短時間で用意できます。
時間のかかる「調べる・読む・まとめる」をAIが肩代わりすれば、担当者が向き合うべきは、結果の解釈やどの国・どの技術を優先するかの判断です。
エムニは、こうしたパテントマップの自動生成に早くから取り組んできました。
「開発現場でどのように活用できるのか」「AIでどこまで分析できるのか」を詳しく知りたい方は、過去の弊社ウェビナーをご覧ください。
こちらのウェビナーでは、生成AIを活用したIPランドスケープ・パテントマップについて、実際の活用イメージを交えながら詳しく解説しています。
▼生成AIを活用したIPランドスケープ・パテントマップに関するエムニ自社ウェビナーアーカイブ
開発現場でIPランドスケープを高速かつ手軽に。AIが技術内容まで理解し、ホワイトスペースを仮説出し
ウェビナーの他にも、オウンドメディアにて特許調査/分析コストに関する記事も書いておりますので、合わせてこちらもご覧ください。
▼エムニの特許分析がもたらす価値について詳しく知りたい方はこちら
特許調査/分析コスト99.9%削減は製造業に何をもたらすのか
検索式の自動生成やクレームチャート作成を支援する
エムニは、検索式の自動生成や権利化サポート、クレームチャートの生成など、知財業務のさまざまな工程に生成AIを活用してきました。
こうした取り組みのねらいは、調査から書類作成までの負担を工程ごとに減らすことです。
現場の課題に合わせ、必要な工程からAIを取り入れる進め方をとっています。
PCT国際出願で生成AIを使う際の注意点
生成AIの効果を引き出すには、人による確認と情報管理という2つの前提を押さえておく必要があります。
実務で生成AIを使ううえで気をつけたい点を、順に見ておきましょう。
AIの翻訳や下書きをそのまま使わず、人が最終確認する
生成AIは、もっともらしい誤りを含む出力を返すことがあります。
翻訳の訳語や明細書の記載をそのまま採用すると、権利範囲や手続きに影響が及びかねません。
AIの出力はあくまで下準備と位置づけ、最終的な内容は人が確認する運用にしておきましょう。
▼生成AIのリスクと対策について詳しく知りたい方はこちら
生成AIのセキュリティリスクとその対策を解説
未公開の発明情報を外部AIに入力せず、機密度に応じた環境を選ぶ
出願前の発明情報は、外部に漏れると新規性を失うおそれのある重要な情報です。
不用意に外部のAIサービスへ入力すれば、情報漏洩のリスクが一気に高まります。
機密度の高い情報を扱う場合は、自社内で完結するオンプレミス型の環境を選ぶなど、扱う情報に応じて利用環境を使い分けることが欠かせません。
▼情報漏洩を防ぐAI環境について詳しく知りたい方はこちら
オンプレミスLLMとは|情報漏洩を防ぎつつ競争優位性あるAIを構築
PCT国際出願は、翻訳・調査・書類作成・移行判断の各段階で生成AIを活用し、担当者の工数を減らせる
PCT国際出願の実務では、各国向けの翻訳、多言語の先行技術調査、明細書やクレームの作成、そしてどの国へ進むかの判断が、担当者の工数を集中させるボトルネックになりがちです。
これらの段階には、それぞれ生成AIの使いどころがあります。
翻訳の下訳、文献の横断的な確認、書類の下書き、移行判断の材料集めまで、AIに下準備を任せ、人が最終確認を担う形にすれば、各工程で担当者の工数を減らすことができます。
まずは自社の知財業務のうち、負担の大きい工程を1つ選び、機密を守れる環境で小さく試すところから始めるとよいでしょう。
もし、自社のどの工程で生成AIを活用できるか判断がつかない場合は、ぜひエムニにご相談ください。
爆速のデモ開発で、手元で動く形から実現性を確かめられます。
エムニへの無料相談のご案内
エムニでは、製造業をはじめとする多様な業種に向けてAI導入の支援を行っており、100社以上の支援実績があります。

案件事例やエムニならではの強みが気になる方はぜひこちらの記事もお読みください。
開発パートナーを検討中の企業様へ

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