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2025-02-13
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2025-02-14製造業における高齢化|深刻な問題とその解決策

日本では少子高齢化が進む中、多くの業界で労働力不足が深刻化しています。特に製造業では、2024年の総務省労働力調査によると、65歳以上の就業者が全体の8.3%を占めており、熟練工の退職が進む中、金型製作や特殊な溶接といった技能者の不足が深刻です。
(出典) 厚生労働省 | 2024年版 ものづくり白書 概 要
その結果、製造ラインの停止や納期遅延といった問題が発生し、企業の競争力低下が懸念されています。このため、技能のデジタル化や若手育成が急務です。
本記事では、製造業における高齢化の現状や課題を整理し、それに対応するための具体的な取り組みについて多角的に解説していきます。
製造業における高齢化が進む背景
日本の少子高齢化は避けられない現実として、多くの業界に影響を与えています。特に製造業では、熟練工の高齢化が顕著であり、深刻な人材不足が課題です。
ここでは、製造業の高齢化が進行する背景について解説します。
少子化
日本では少子化が深刻化しており、将来的な労働力不足が懸念されている状況です。出生数は減少を続けており、令和47年には56万人になると推計されています。この数値は、日本の人口を維持するために必要とされる出生数を大きく下回る結果です。
また、年少人口(0~14歳)は令和38年に1,000万人を割り込み、さらに令和47年には898万人にまで減少するとされています。これは現在の約1,500万人(2020年時点)から40%近く減少する規模であり、次世代の労働力供給に深刻な影響を及ぼすと予測されています。
さらに、出生数の減少は生産年齢人口(15~64歳)の減少にも直結する問題です。2020年時点で約7,500万人だった生産年齢人口は、令和11年に6,951万人と7,000万人を下回り、令和47年には4,529万人にまで減少すると見込まれています。
この約3,000万人の減少は、東京、大阪、愛知の3都府県の総人口(約3,030万人)に相当する規模です。これほどの規模の労働力が失われることで、日本の産業基盤や社会全体の持続可能性が揺らぐ可能性があります。
高齢化
日本の製造業は、国内で急速に進む高齢化の影響を強く受けています。まずは、国内の高齢化の現状をデータに基づいて確認した上で、他国との比較を通じて日本の特異性を明らかにします。
日本では、2023年時点で65歳以上の高齢者が総人口の29.1%を占めており、世界で最も高い水準にあるといえるでしょう。また、高齢者の中でも75歳以上の割合が増加しており、2023年には総人口の16.1%に達しています。この割合はさらに上昇し、2045年には20.9%に達すると予測されています。このような高齢者人口の増加は、社会全体の労働力不足や経済的な負担を増大させる大きな要因です。
製造業も例外ではなく、高齢化の深刻な影響を受けています。2002年には58万人だった製造業の65歳以上の高齢就業者数は、2020年には92万人にまで増加しました。この数字は、熟練技能を持つ高齢者が製造現場で重要な役割を果たし続けている一方で、若い世代の担い手が不足していることを物語っています。
さらに、日本の高齢化率は他国と比較しても際立った特徴です。2023年時点では、イタリアが24.5%、フィンランドが23.6%であるのに対し、日本は29.1%と約5ポイントも上回っています。この大きな差は、移民政策の制限や出生率の低下といった日本特有の要因によるものでしょう。
若者の製造業離れ
日本の製造業は、急速に進む高齢化とともに、若年層の就職志望度の低下や人材流出に直面しています。
全産業における若年労働者(15~34歳)の割合は約24%であり、製造業も同程度の24.6%を占めていますが、宿泊業・飲食サービス業(34.3%)や卸売業・小売業(23.9%)と比べて低い水準です。また、製造業の若年就業者数は2023年時点で259万人にまで減少しており、20年前と比較して大幅に縮小しています。この現状は、製造業が若者にとって魅力的な就職先でなくなりつつあることの証左でしょう。
学歴による雇用形態の違いも、若者の製造業離れに影響を与えている可能性があります。製造業では、高学歴の若年層ほど正社員として雇用される割合が高い一方で、低学歴層では非正規雇用が多い傾向があります。
この傾向は他の産業にも見られますが、製造業では非正規雇用が単純労働に集中している点が特徴です。このため、低学歴層にとって製造業は長期的なキャリアパスを描きにくい環境と思われています。また、高学歴層はITやサービス業など他の産業で、より安定した雇用条件や多様なキャリア選択肢を求め、製造業以外に移行しています。この点も、若年層の製造業離れの要因となっているのです。
さらに、製造業には「きつい」「汚い」「危険」というイメージが根強く残っており、これが若者にとっての魅力を低下させています。一方、ITやサービス業ではデジタル技術の活用により職場環境が整備され、働きやすさや柔軟性が向上しています。このような特徴が、今の製造業にはない大きな付加価値として若者に評価されているのです。
高齢化が製造業に及ぼす影響
高齢化は、製造業に様々な影響を及ぼし、その範囲は人材確保や技能継承、生産性、労働環境に至るまで多岐にわたります。
これから、その具体的な影響について詳しく見ていきましょう。
技術・技能の継承問題
日本の製造業では、熟練工が退職する中で、技術や技能を若手社員に継承することが難しいという課題が明確になっています。労働政策研究・研修機構の調査によれば、製造業の企業の多くが技能継承を重要視しているものの、約8割が将来の技能継承に不安を感じていると報告されています。
(出典) 労働政策研究・研修機構 | 若手ものづくり人材確保の厳しさが技能継承の足かせに
技能継承が難しい背景には、少子化による若年ものづくり人材の不足が挙げられるでしょう。母数の人材が不足することにより、技能を引き継ぐべき若年層の人材が減少し、多くの企業で技能継承が困難になっている状況です。また、計画性のない場当たり的な指導が続くことで、技能継承の効率が下がっていることも問題です。
さらに、熟練工と若手社員の間の年齢差や経験の違いが原因で意思疎通が難しく、技能伝達が滞るケースが多く見られます。また、熟練工の技術やノウハウが個人的な経験に基づいている場合、それを形式化することの難しさも課題を深刻化させる要因です。
調査によると、若手中心の組織づくりや将来を見据えた人材育成方針を持つ企業では、技能継承が比較的スムーズに進んでいるとされています。一方で、採用がうまくいかない企業やベテラン中心の組織では、技能継承に不安を抱えている傾向が強いことが分かっています。現状を踏まえ、計画的な技能継承プログラムや若手人材の育成などの具体的な対応が必要でしょう。
生産性の低下
高齢化が進む中で、労働力人口の減少は生産性低下の主な要因の一つです。内閣府のデータによると生産年齢人口(15~64歳)は2050年には2021年比で29.2%減少し、5,275万人になると予測されています。この急激な減少は、企業が必要な人材を確保することを困難にし、生産活動全体に深刻な影響を与えるでしょう。
さらに、高齢労働者の増加も生産性低下の一因です。65歳以上の高齢労働者が現場で重要な役割を担うケースは増えていますが、体力や認知機能の低下により作業効率が落ちる可能性があります。
また、厚生労働省の調査によれば、高齢労働者の労働災害発生率は若年層と比較して大幅に高いことも示されています。体力などの低下により安全管理の負担が増え、現場では事故やトラブルが発生しやすい環境となっているのです。実際に生産計画の遅延やコストの増加につながる事例は多数報告されています。
これらの課題が複合的に絡み合う中で、生産性の低下は日本の製造業にとって喫緊の課題です。特に中小企業では、労働力不足や技能継承の滞りが経営に与える影響が大きく、競争力の低下が懸念されています。この現状を改善するためには、計画的な技能継承や作業環境の整備、安全対策の強化が必要でしょう。
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中小規模製造業 × DX|労働力不足を解消するテクノロジーの力
高齢化に対応するための対策
日本の高齢化が進む中、企業が持続的に成長するためには、高齢者の活躍を支援しながら、働きやすい環境を整えることが重要です。
ここでは、AI活用による自動化、高齢者の活躍促進、作業負担の軽減、そして技術・技能の継承に向けた具体的な取り組みを紹介していきます。
AI活用による自動化
少子高齢化が進む日本の製造業では、人材不足や熟練技能の継承が大きな課題です。特に、現場の高齢化に伴い、検査やメンテナンス業務の効率化、安全性の確保、若手作業員の育成支援が急務となっています。このような課題に対し、AIは新たな解決策を提供できる技術として注目されています。
例えば、製造ラインでの外観検査においては、従来は熟練作業員の経験や目視によって製品の不良品検出が行われていました。しかし、AIを活用した画像認識技術を導入することで、この検査業務を自動化し、作業負担を軽減するだけでなく、検査精度も向上させることが可能です。また、AIは高齢作業員のミスを防ぐ補助ツールとしても活用でき、熟練技能をデータ化して若手作業員への技能伝承を支援します。
さらに、AIによる予測機能は、製造現場での機械の故障予測や設備の異常検知に役立つでしょう。例えば、振動や温度のデータを解析することで、機械の状態をリアルタイムで把握し、故障の兆候を事前に検出できます。これにより、予防保全を効率的に行い、高齢作業員が安全な環境で働けるでしょう。また、こうした技術は設備停止を防ぎ、生産効率の向上にも貢献します。
AIの導入は、単なる業務効率化にとどまりません。高齢化が進む中で、現場の作業環境を改善し、高齢作業員が無理なく働ける仕組みを構築することができます。同時に、若手人材の不足という課題にも対応し、技能の継承や組織全体の生産性向上を図ることが期待されます。このように、AIは高齢化社会の製造業において、持続可能な働き方と効率的な生産を支える重要なツールとなっていくでしょう。
技術・技能の継承
熟練した高齢者の技術や知識を次世代に引き継ぐことは、企業の競争力を維持する上で重要です。これを実現するためには、現場での直接指導やノウハウの共有、さらにはIT技術の活用をする必要があります。
熟練者が若手社員に直接指導を行うOJT(On-the-Job Training)は、実務を通じて効率的に技術を伝える方法として有効です。しかし同時に、個人のノウハウをマニュアル化し、標準的な手順として共有することで、知識を形式知化する取り組みが求められます。
また、OJT以外にも動画やVR(仮想現実)を活用した教育やトレーニングは、視覚的かつ実践的な学習を可能にし、学習効率を高める手段として注目されています。特に、シミュレーションを活用することで、実際の作業に近い体験を安全な環境で提供し、技術の習得をサポートを促しているのです。
例えば、動画を活用したシミュレーションでは、若手社員は現場作業をリアルに再現した環境で効率的に学ぶことができます。さらに、VRを使用したトレーニングでは、危険を伴う作業を仮想環境で再現し、安全に怪我することなく必要な知識やスキルを習得することが可能です。
▼技能伝承の具体的な方法を更に詳しく知りたい方はこちら
高齢者の活躍促進
日本の高齢化社会では、高齢者の能力を最大限に活かしながら、企業の生産性を維持・向上させる取り組みが求められています。そのためには、役職定年や定年制の見直し、スキルに応じた処遇の導入、ジョブ型人事制度の活用が重要とされています。
高齢者がその経験やスキルを活かし続けられるようにするためには、役職定年や定年制の見直しが必要です。一律で年齢を基準に役職から外れる制度を廃止し、個々のパフォーマンスや意欲に基づいて判断される仕組みを導入する動きが各社で見られます。また、ジョブ型人事制度の導入と組み合わせることで、年齢に関係なく意欲や能力に応じた人材配置や登用を進める取り組みも同時に進んでいます。
従来の年功序列型の報酬体系から、スキルや職務内容に基づく処遇へ移行することも、高齢者のモチベーション向上に効果的です。ジョブ型人事制度の導入に伴い、職務ごとに必要なスキルや役割を明確化し、それに応じた報酬体系を設定する動きが増えています。この仕組みにより、従業員が自ら職務やスキルを選択し、必要なリスキリングを行える環境が整備されています。
さらに、管理職の報酬体系も見直されており、職責や業績に基づく等級制度を採用する企業が増加中です。これにより、勤続年数に左右されず、意欲的で能力のある従業員が適切に評価される仕組みが構築されつつあります。
これらの取り組みは、高齢者の貴重な経験やスキルを活かすだけでなく、若手社員の成長を支え、組織全体の活性化を促すものです。企業が柔軟で公平な制度を採用することで、多様な人材が活躍する職場環境を構築し、競争力を高めることが期待されます。
高齢者の作業負担軽減
高齢者が安全かつ健康的に働ける環境を整備するためには、作業環境と方法の総合的な改善が重要です。高齢者の事情を無視するのではなく、彼らの身体的特徴や能力を考慮した取り組みによって、働きやすさと安全性を向上させることができます。
身体的負担の軽減には、適切な設備や機器の導入が有効です。例えば、重量物の運搬作業には電動リフターや移動式作業台を活用し、腰や背中への負担を軽減できます。また、階段や段差には手すりを設置し、移動時の安全性を確保することが求められます。さらに、十分な広さの通路を確保することも転倒リスクを低減する上で欠かせません。
(出典)厚生労働省 | 高年齢労働者に配慮した職場改善事例(製造業)
作業方法の改善も設備の導入と並行して進めなくてはいけません。改善を進めていく上で作業手順を標準化し、誰もが理解しやすいように写真やイラストを用いた手順書を作成することが肝要です。また、新たな設備の導入や作業手順の変更時には、全ての作業者を対象に教育訓練を実施することが求められます。さらに、高齢者を含む作業者から意見を積極的に収集し、現場に即した改善策を講じることが現実的で実効性のある環境整備につながります。
例えば原料運搬作業では、移動式電動リフターを導入し、半自動化によって作業者の身体的負担を大幅に軽減しました。高所作業においては、柵付きの作業床や安全帯を取り入れることで、転落事故の発生を未然に防ぐ取り組みが進められています。また、旋盤の操作パネルを改良し、直感的な操作性を高めることで、視覚機能の低下が原因となる誤操作や事故のリスクを最小限に抑えました。
これらの施策は、現場の安全性を飛躍的に向上させるとともに、高齢者が安心して持続的に働ける環境づくりにも大きく寄与しています。
(出典)厚生労働省 | 高年齢労働者に配慮した職場改善事例(製造業)
高齢者の作業負担を軽減するためには、設備の導入や作業環境の一時的な改善だけでなく、作業方法の見直しや継続的な意見の収集を通じて、総合的に長期的に取り組むことが必要です。企業は、高齢者が安全かつ健康的に働き続けられる環境を提供するために、積極的な努力を進めていくことが求められます。
対策を行った企業の実例
高齢化社会の課題に対応するため、ダイキン工業株式会社、川崎重工業株式会社、オムロン株式会社は、それぞれ独自の取り組みを進めています。
これらの事例を通じて、どのようにシニア層の活躍を促進し、組織の成長に繋げているのかを見ていきましょう。
ダイキン工業株式会社
ダイキン工業株式会社では、高齢化による人材不足に対応するため、抜本的な人事・処遇制度の見直しを行い、70歳以上でも働ける環境を整備しました。
同社は、将来の事業拡大に向けて、質・量の両面で人材不足の課題を抱えており、10年後には従業員の21%が60歳以上になると予想されています。このような状況の中、豊富な知識と経験を持つベテラン社員の活性化を図ることが不可欠であると判断し、定年延長を含む大幅な制度改正を実施。制度改正と同時に、若手や中堅層の活性化を重視し、経営トップ層や労働組合と協議を重ね、従業員の意欲を引き出し納得性の高い制度設計を行いました。
定年を60歳から65歳に引き上げ、65歳以降は70歳まで再雇用制度を適用し、70歳以降はシニアスキルスペシャリスト契約社員として雇用する仕組みを整えました。さらに、56歳到達時に実施されていた役職定年を廃止し、60歳以降に行われていた一律の賃金引き下げも撤廃しています。また、制度変更に伴い、56歳から59歳までの賃金を新制度に合わせて引き上げ、60歳から64歳までの再雇用者には賞与評価体系を見直し、優秀な従業員には賞与を増額する仕組みを導入しました。
人材配置においては、2023年に導入した人材データベースを活用し、毎月2回の柔軟な人事異動を行っています。特に、年齢に関係なく著しい成果を上げた従業員には「部門長特別賞与」を支給する制度を設け、資格や年齢を問わず公正な評価を実現しています。
若手社員への配慮としては、役職登用や配置が年齢に関わらず能力と成果に基づくものであることを明確にしました。さらに、モチベーションの維持を目的に賃金カーブの引き下げは行わず、「人」への投資を重視しています。この取り組みによって、従業員が安心して挑戦や成長に取り組む環境を提供しています。
川崎重工業株式会社
同社は、高齢化に伴う課題として、幹部職員の人事制度における問題に直面していました。従来の制度では、職務の難易度や責任の度合いが十分に反映されず、職務価値と報酬が乖離する傾向があったのです。また、同一グレードでの長期滞留が幹部職員のモチベーション低下を招く懸念も指摘されていました。
2021年に、川崎重工業は幹部職員の人事制度を改定し、年齢ではなく役割や成果に応じた処遇を重視する方針を打ち出しました。この改定では、幹部職員約4,000人を対象に職務分析と評価が行われ、従来の4区分だったグレードが13区分に細分化されています。職務評価は、「知識・経験」「問題解決」「達成責任」の3つの要素を基準としており、各職務の規模を測定する仕組みが採用されました。さらに、個人のチャレンジ目標を評価に反映する格付けシステムも導入されています。
報酬体系の見直しも進められ、従来の年俸制から月俸制への移行が実施されました。この変更により、職務等級の変更が迅速に報酬へ反映されるようになり、柔軟な処遇が可能となっています。賞与についても、月例賃金に連動する固定額に加え、個人の業績評価に基づく職務等級別の個人業績賞与が新たに加わりました。
また、従来58歳で実施されていた役職定年制が廃止され、定年が65歳に延長されました。これにより、年齢に関係なく、能力と意欲のある幹部職員が長期間活躍できる環境が整えられています。一方で、役職定年制廃止による人材の滞留を防ぐため、一つのポストの任期を最長5年とするポスト任期制も新たに導入されました。さらに、職務遂行に必要な行動特性を定義し、社員の行動評価を基に適材適所を実現する評価方法も採用されています。
制度改定の結果、職務等級の細分化によって報酬レンジが拡大し、処遇の柔軟性が向上しました。ただし、年齢と職務等級間には依然として一定の相関関係が見られるため、完全な年功序列型処遇からの脱却には至っていない状況です。それでも、役割や成果に応じた処遇の実現に向けて着実な進展が確認されています。
オムロン株式会社
同社は「70歳以上まで働ける企業」を目指し、高齢化による課題を解決しながら持続的な成長を図るため、ジョブ型人事制度を基盤にシニア社員の処遇制度を整えました。
オムロンは、長期ビジョン「Shaping the Future」の中で、全社員が主体的にキャリア成長に取り組む人材マネジメントの変革を進めています。しかし、従来の定年後再雇用制度には、役割や期待が不明確で、65歳までの雇用確保に重点を置いた義務的な側面が強調される課題がありました。また、2021年の同一労働同一賃金に関する法改正を受け、制度の根本的な見直しが必要だと判断されました。
そこでオムロンで導入されたのがジョブ型人事制度です。同社では全社員に対してポストの役割や責任に応じた職務給を適用する仕組みが構築されています。各ジョブの役割ごとにグレードが設定され、役割の変更に応じてグレードが上下する柔軟な制度になっています。この仕組みはシニア社員にも適用され、職務給がそのまま反映される一方で、企業年金の受給権発生を考慮し、正社員と比較して報酬水準は若干低い設定です。また、目標管理と行動評価を基にした総合評価が処遇に反映され、賞与もグレードに応じて支給される仕組みとなっています。
同社では役職定年制を廃止し、定年後再雇用時には原則としてポストを後進に譲る方針を導入しました。ただし、例外的に会社からオファーを受けた場合には、経営基幹職を継続できる制度が設けられています。定年後の配置については、本人の希望を基に職務評価を実施し、適切なグレードで一般職として再配置されます。さらに、公募・応募制度を活用し、本人の希望と人事部門の判断を組み合わせて配置を決定する仕組みも整備しました。
制度導入から間もないため、大きな問題は報告されていませんが、社員の行動や思考の変革を促し、制度の意図に沿った運用を徹底することが今後の重要な課題とされています。オムロンの取り組みは、高齢化社会において年齢に依存せず、役割と成果に基づく処遇を実現する好例です。シニア社員の経験や能力を最大限に活かす制度設計の重要性を示すとともに、公募制度を通じて社員が主体的にキャリアプランを描ける環境を整えることで、企業全体の持続的な成長を目指しています。
エムニの事例|生成AIが少子高齢化問題の解決に寄与
日本が直面する少子高齢化問題は、製造業における人材不足や技能継承の課題、そして高度な専門性が求められる業務の効率化が必要とされています。
エムニでは生成AIを活用し、これらの課題に対する革新的なソリューションを提供し成果を挙げてきました。
技能伝承を支援するAIインタビュアー
これまで見てきたように日本が直面する少子高齢化問題は、製造業における人材不足や熟練技能の継承難に直結しています。
この課題に対し、エムニが提供する「技能伝承を支援するAIインタビュアー」は、生成AIを活用して新たな解決策を提示しています。
熟練工が長年培ってきたノウハウや暗黙知は、通常は個人に依存しやすく、その伝承には多大な時間と労力が必要です。しかし、エムニのAIインタビュアーは、熟練工との対話を通じてこれらの知識を抽出し、生成AIを用いて言語化・整理しました。この情報はデータベースに蓄積され、「Knowledge Tree」やChatGPTを活用したチャットボットを通じて、現場作業員や若手社員が簡単にアクセスできる形で提供されています。
例えば、製造現場で異常が発生した際、若手作業員が状況をAIに入力すると、蓄積された知識をもとに異常の原因や解決策が迅速に提示されます。これにより、熟練工の現場不在時でも、適切な対応を行うことが可能です。また、若手作業員が実際の作業を通じて効率的にスキルを習得できるため、人材育成のスピードが大幅に向上します。
エムニのこのソリューションは、技能伝承を効率化するだけにとどまりません。少子高齢化が引き起こす人材不足や技術継承の危機に対し、製造業の未来を支えるための新たな道を切り開く画期的な取り組みです。
▼エムニのAIインタビュアーが実現する技能伝承の詳細を知りたい方はこちらのページをご覧ください!
https://www.emuniinc.jp/service/case/4rew_d5_3
特許調査業務の効率化を支援する特許翻訳LLM
特許調査業務は膨大な情報量と高度な専門性が求められるため、これまで多大な時間とコストを要していました。エムニでは、この課題に応えるため、特許翻訳に特化したLLMを独自に開発し、特許調査業務の効率化を実現しました。
この取り組みでは、日本特許翻訳株式会社が提供する120万文対の特許翻訳データを活用し、ファインチューニングによって翻訳精度を大幅に向上させています。さらに、オンプレ環境で運用することで、高度なセキュリティを確保しながら、信頼性の高い特許翻訳ソリューションを提供している点も特徴の一つです。
従来では数百万円と数ヶ月を要していた特許情報の検索や翻訳作業が、わずか数百円と数秒で完了することを実現しました。また、データ収集やクレンジングといった事前準備の段階から支援できる点も、エムニならではの強みです。これにより、特許文献の正確な翻訳や効率的な情報抽出が可能となり、調査業務全体の効率化と品質向上を大きく前進させています。
特許翻訳専用モデルは、汎用翻訳モデルと比較して大幅な性能向上を果たしました。例えば、BLEUスコアで優れた結果を示し、専門性の高い特許用語や文脈の理解も、このLLMによって精度高く行えるようになっています。また、デモ開発を通じて実運用に向けた課題を克服し、実際の特許調査業務に導入されました。
エムニの特許翻訳LLMは、特許調査業務の効率化だけでなく、少子高齢化による人材不足への対応にも貢献しています。調査にかかる労力を大幅に削減しながら、高品質な結果を提供するこのソリューションは、特許分野における革新的な取り組みとして評価されています。さらに、業界全体のデジタル化と効率化を支える基盤としても期待されており、少子高齢化問題の克服に向けた一助となるでしょう。
注釈:BLEUスコアとは現在最も広く使用されている機械翻訳の評価方法です。
▼エムニの特許翻訳LLMによる特許調査業務の効率化について詳しく知りたい方はこちらのページををご覧ください!
https://www.emuniinc.jp/service/case/gt3mkyhfhqzz
まとめ:高齢化社会に対応した製造業の未来
日本では少子高齢化が進む中、製造業は労働力不足や技能継承の問題に直面し、その解決が急がれる状況にあります。
高齢者が持つ豊富な経験や専門的なスキルを活用するためには、役職定年の見直しやスキルに応じた適正な処遇、さらにジョブ型人事制度の導入が不可欠です。これらの施策により、高齢社員が意欲を持ち続けて働ける環境が整備されるだけでなく、若手社員の育成を促進し、組織全体の生産性向上にも大きく寄与します。
特に、柔軟で公正な評価制度や働きやすい職場環境の整備、さらには技能継承を効率化するための仕組みづくりが重要な要素です。例えば、年齢や役職に関係なく、能力や成果を正当に評価する制度は、高齢社員のやる気を引き出し、組織内の公平性を高める効果が期待されます。また、作業環境の改善やデジタル技術の活用は、高齢社員が安全かつ健康的に働き続けられる職場づくりに貢献します。
今後、日本の製造業が持続可能な成長を実現するためには、あらゆる世代の社員が能力を最大限に発揮できる環境の構築が重要となってくるでしょう。
エムニへの無料相談
エムニでは、製造業に特化し、製造業が抱える課題に対して、企業様と伴走しながら、迅速かつ的確なAIソリューションの開発を行っております。
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