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2025-06-30知的財産調査|目的、種類、実践方法まで徹底解説

知的財産は、現代ビジネスにおいて企業の競争力を左右する重要な資産です。
技術革新とグローバル化が加速する現代において、その適切な管理には、正確かつ戦略的な知的財産調査が欠かせません。
本記事では、知的財産調査の基本的な概念、目的、主な種類、そして実践的な方法について解説します。
知的財産調査とは?
知的財産調査とは、特許・商標・意匠といった知的財産権の取得状況や利用状況や、技術の先行事例を多角的に調べる活動を指します。
この調査は、新規事業の立ち上げや製品開発・販売など、さまざまな場面で活用されており、目的も多岐にわたります。
たとえば、新たな技術を開発する際には、すでに同様の技術が特許化されていないかを確認することが重要です。これにより、無駄な開発コストや他社からの訴訟リスクを回避できます。
また、商標登録の前に同一または類似の商標が存在しないかを調べることで、ブランドの毀損リスクや商標権侵害のトラブルを未然に防ぐことが可能です。
知的財産調査の価値は単なるリスク回避に留まりません。他社の技術動向や市場トレンドを把握することで、自社の研究開発の方向性を明確にでき、新たなビジネスチャンスの発見にもつながります。
つまり、知的財産調査は、企業の成長を支える攻めと守りの両面を持つツールと考えることができます。
主な知的財産調査の種類
知的財産調査は、対象とする知的財産権の種類に応じて、調査手法や目的が異なります。ここでは、特許調査、商標調査、意匠調査の3つに焦点を当て、それぞれの概要を説明します。
特許調査:技術と事業の可能性を見極める
特許調査は、発明や技術に関する特許情報を収集・分析する調査です。企業の研究開発や製品化の過程において、以下のような目的で活用されます。
技術動向調査 | 研究開発の前段階で、特定分野における最新の技術動向や競合の開発状況を把握するための調査。 |
先行技術調査 | 出願予定の技術に類似する既存の発明(先行技術)を調べる調査。自身の技術が新規性や進歩性を満たしているかを確認し、特許取得の可能性を判断する。 |
侵害防止調査 | 自社技術が他社の特許を侵害していないかを確認する調査。侵害予防調査、クリアランス調査、FTO(=Freedom To Operate)調査など、複数の呼び方がある。 |
無効資料調査 | 製品販売時に障害となり得る他社の特許に対し、それを無効化し得る資料(先行文献など)を探す調査。 |
調査には、特許公報や出願情報を収録したデータベースが活用されています。
キーワード検索に加えて、IPC(国際特許分類)やFI/Fターム、出願人名などによる分類検索を組み合わせることで、より網羅的かつ精度の高い情報収集が可能になります。
特許調査を適切に行うことで、研究開発の方向性を明確にし、不要な投資や紛争リスクの回避につながります。
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商標調査:ブランドを守るための第一歩に
商標調査とは、使用を検討している名称やロゴが、すでに他社により商標登録されていないか、または類似の商標が存在しないかを調べるための調査です。
商標権侵害のリスク回避 | 使用予定の名称・ロゴが、他社の商標と抵触していないかを事前に確認する調査。 |
商標登録の可否判断 | 登録の可能性があるかを調査し、出願戦略を最適化する調査。 |
ブランドイメージの保護 | 他者との混同を避け、自社のブランド独自性を維持するための調査。 |
調査では特許庁が提供する商標検索ツールJ-PlatPatが使われており、指定商品・役務の区分を考慮したうえで、該当する商標を包括的に確認されています。
適切な商標調査は、将来的なトラブルを未然に防ぐだけでなく、ブランド戦略をスムーズに進める上で不可欠なステップです。
参考情報:J-PlatPat
意匠調査:デザインの独自性と競争力を守る
意匠調査は、製品のデザインや形状などが既存の意匠権(先行登録意匠)と重複していないかを確認するための調査です。意匠の創作段階や出願準備において、以下のような目的で活用されます。
意匠権侵害の回避 | 開発したデザインが他社の登録意匠と類似していないかを事前に確認する調査。 |
意匠登録の可能性判断 | 創作したデザインが保護対象となり得るかを見極める調査。 |
市場のデザイントレンド把握 | 競合他社のデザイン傾向や市場の流れを把握する調査。 |
意匠調査では、意匠公報や公開意匠公報データベース(J-PlatPatなど)を活用し、形状、模様、色彩などの特徴を基に、類似意匠の有無を詳細に調査します。とくに近年では、機能性とデザイン性を両立させた製品開発が求められており、意匠調査の重要性はますます高まっています。
参考情報:J-PlatPat
調査の進め方:実務で使える簡単な知的財産調査フロー
知的財産調査を効果的に進めるためには、目的や種類を理解するだけでなく、実際にどのような調査を行うかというプロセスを軽く把握しておくことが重要です。ここでは、調査を行う上での基本的なステップを、「準備」「ツールの活用」「結果の分析と報告」の3つに分けて解説します。
①調査の目的と対象範囲の決定
調査を始めるにあたって、まず最初に行うべきは調査の目的を明確にすることです。例えば、
- 「新技術が特許取得可能かを確認したい」
- 「競合他社がどの分野で技術を展開しているのかを知りたい」
- 「ある名称が商標として登録可能かを見極めたい」
といった目的によって、調査の対象、深さ、手法は大きく異なります。
目的が明確になったら、次に適切な検索キーワードや分類の選定に移ります。特許調査の場合、関連する技術用語、製品名、機能などを洗い出し、同義語・類義語・英語表記なども含めて、検索ワードを準備します。
商標調査の場合は、調査対象の商標について、
- 表記(漢字/カタカナ/ローマ字など)
- 発音や意味の類似性
- 使用予定の商品・サービス区分(NICE分類)
など、複数の視点から類似の可能性を検討する必要があります。
この準備段階にどれだけ時間と労力をかけるかが、調査全体の質と成果を左右します。
②各種データベースとツールの活用
実際の調査では、信頼性の高いデータベースとツールの活用が不可欠です。
日本国内においては、J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)が最も基本的かつ重要なツールです。特許・実用新案・意匠・商標に関する公報情報を無料で検索・閲覧でき、初心者から上級者まで幅広く利用されています。
より専門性の高い調査や、海外を含むグローバルな特許・商標情報を必要とする場合は、有料の商用データベース(例:Derwent Innovation、Orbit Intelligence、PatBase など)や可視化ツール(パテントマップ作成ソフト等)の利用も視野に入れるべきでしょう。
こうしたツール群は年々進化しており、近年ではAI技術の導入も一部で進んでいます。
とくに、初期調査の効率化や漏れの少ない検索を目的とした機能が注目されており、今後のツール選定においてはAIの活用度合いも一つの判断基準となっていく可能性があります。
参考情報:
- Derwent Innovation 特許検索ソフトウェア | クラリベイト
- Orbit Intelligence – 知的財産インテリジェンス – Questel
- IP調査プラットフォーム、PatBase | RWS
③調査結果の分析と報告
検索によって得られた大量の情報は、適切な分析と整理を経て、初めて意味ある知見として活用できます。
たとえば特許調査では、検索結果から関連性の高い文献を抽出し、
- 発明の技術的特徴の整理
- 権利範囲の解読
- 競合技術との違いの特定
などを通じて、技術的・法的・戦略的な判断材料を導き出す必要があります。
また、調査結果を報告する際には、報告先の役職や関心分野に応じた表現の工夫も欠かせません。技術者向けには詳細なデータや技術解説、経営層向けには要約やリスク評価、提言を重視するなど、読み手に応じた報告書の構成が求められます。
さらに、図表やパテントマップなどの可視化資料を活用することで、複雑な情報も直感的に伝えやすくなり、社内での意思決定にも貢献します。
▼パテントマップについて更に詳しく知りたい方はこちら
パテントマップとは?具体的な用途から導入方法まで
調査を成功させるための3ポイント
知的財産調査は、単発で完結するものではありません。継続的な取り組みと状況に応じた柔軟な対応が求められます。
①専門家への調査依頼の検討
調査は基本的に社内でも実施可能ですが、高度な専門性や法的判断を要する場面では、弁理士や弁護士といった専門家の支援を受けることが有効です。例えば、以下の場合が考えられます。
- M&A、技術提携、新規事業など高リスク領域
- 他社から権利侵害の通知を受けたケース
- 特許の有効性を争う法的対応が必要な場合
専門家は、豊富な経験と知識に基づき、独自の調査手法やツールを駆使して、より信頼性の高い調査結果を提供してくれます。また、調査結果に基づく法的リスクの評価や、今後の戦略立案についても具体的なアドバイスを得られるため、不確実性の高い局面においては、費用対効果の高い選択肢となり得ます。
②継続的な調査の重要性
特許出願や商標登録は日々行われており、知的財産の状況は常に変化しています。そのため、特定の技術分野における研究開発を続けている場合や、ブランド展開を行っている場合は、定期的・継続的に調査を行うことが大切です。定期調査を行うことで、
- 自社権利の潜在的な侵害リスクの早期発見
- 競合の技術戦略の把握
- 新たな市場機会の発見
といった戦略的対応が可能となります。
③AIツールの導入による効率化
調査を継続的に行うには、コストや時間の制約も考慮しなければなりません。AI検索ツールの導入は、初期投資こそ必要ですが、その後は低コストかつ繰り返し利用可能であり、社内調査の自動化や効率化に大きく貢献します。
AIの導入により、人手では見落としがちな情報を抽出したり、検索条件の自動最適化が可能になるなど、専門家でなくても高精度な調査が実現できる点も大きな利点です。
例えば、株式会社レゾナックでは、業務効率化を目的としたAI利用を進めています。自社関連の特許公報への類似順を並び替えることで、調べあげる特許数を減らすことや、特許の要約や読み込み時間の短縮することが行われています。
また、株式会社日立製作所では、知的財産を可視化するツールを作成する、特許情報分析サービスを提供しています。特許業務の専門スキルがなくても、高精度な分析が可能であるとして、注目が集められています。
エムニでも、特許調査の加速を目的として「AI特許ロケット」という製品を開発しております。生成AIを用いて短期間で広い分野の特許調査を誰でも行うことができるため、製造業をはじめ電子機器など幅広い業種で使われています。
▼特許調査によるAI活用について詳しく知りたい方はこちら
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参考情報:
まとめ:知的財産調査は、未来を切り拓く情報戦略
知的財産調査は、単なる確認作業ではなく、事業リスクを回避し、競争優位を築くための戦略的な活動です。
特許・商標・意匠の調査を通じて、技術動向や市場の変化を捉えることができます。
本記事を通じて、知的財産調査の多様な目的、具体的な種類、そして実践的な進め方について深く理解を深められたのではないでしょうか。
新規事業の立ち上げ、製品開発、ブランド戦略の構築など、ビジネスのあらゆる段階において、知的財産調査は意思決定の精度を高め、リスクを最小限に抑える上で欠かせないプロセスです。自社の知的財産を最大限に活用し、他社の権利を尊重しながら、未来に向けたイノベーションを加速させるためにも、ぜひ本記事で紹介した内容を参考に、知的財産調査を積極的に活用してみてください。
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引用元:株式会社エムニ