
【2026年版】生成AIで進化する製造業の設計最適化
2026-08-02【2026年版】モデルベース開発(MBD)への生成AI活用
モデルベース開発(MBD)は、制御ソフトウェアや組込みシステムをモデル中心で設計し、シミュレーションや自動コード生成、検証までを一気通貫で進める開発手法です。自動車や航空宇宙などの製品開発では、すでに標準的なアプローチとなっています。
一方、近年の製品開発では、ソフトウェアや制御だけでなく、機械、電気、通信、要求仕様など、複数の領域をまとめて設計する必要があります。そこで広がっているのが、製品やシステム全体をモデルで表現し、設計・検証を進める考え方です。このアプローチは、MBSE(Model-Based Systems Engineering)と呼ばれます。特に、SysML v2の登場により、生成AIを活用したモデル生成や設計支援が現実的になりつつあります。
本記事では、米国NISTなどの国際標準や各国政策、BMW社等の事例をもとに、モデルベース開発にAIを活用するための実践的な進め方を整理します。
SysML v2とAIエージェントが実現する次世代モデルベース開発「MBSE 2.0」
モデルベース開発への生成AI活用は、従来の「モデル作成やコード生成など個別工程を効率化する支援」から、「SysML v2と自律型エージェントを組み合わせて、設計から製造までを1つに統合するMBSE 2.0」へと役割が広がってきています。
モデルベース開発(MBD)は、制御ソフトや組込みシステムの仕様をブロック線図などのモデルで表し、シミュレーション・自動コード生成・検証までを一気通貫で扱うアプローチです。
そのうえで、システムの要求・振る舞い・構造などを統一的に記述するために整備された国際標準モデリング言語が、SysML(Systems Modeling Language)です。
Word・Excel・PowerPointといった別々の文書に分かれていた要件・設計・検証の情報を、SysMLで相互に関連づけられたモデル群として一元管理する手法をモデルベースシステムズエンジニアリング(MBSE)と呼びます。
自動車・航空宇宙を中心に、要件件数が膨らみやすい(=複雑なシステムを扱う)領域で、MBSEの導入が進み、開発の中核的な手法として位置付けられるようになっていました。こうしたモデル中心の開発環境の拡大に伴い、生成AIの活用範囲も急速に広がっています。
生成AIで実現していることは、大きく次の3つに整理できます。
| 活用領域 | 内容 |
| 要件文書からのモデル生成 | 自然言語で記述された要求仕様からSysML v2のテキスト構文やモデルを生成し、モデリング作業を効率化する。 |
| 設計・検証の探索拡大 | ジェネレーティブデザインや合成データ生成によって、設計案の探索や検証ケースの作成を効率化する。 |
| AIエージェントによる開発支援 | エージェント型AI(Agentic AI)が設計レビューや影響分析を支援し、エンジニアと協調しながら開発を進める。 |
こうした動きを背景に、各国政府や産業界でも、生成AIを活用した設計・製造プロセスの高度化に向けた取り組みが進んでいます。
参考記事:Using LLMs to Convert Documentation to SysML
1. SysMLとは?(大阪大学)
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モデルベース開発にAI活用が必要とされる背景|製品の複雑化と専門人材不足、国際的な標準化への対応
モデルベース開発に生成AIを組み込まざるを得ない理由は、特定の技術トレンドだけでは説明しきれません。
製品のソフトウェア定義化、SysML人材の不足、SysML v2の正式採択、国内外の政策・経営環境の変化が同時に押し寄せ、従来のMBDの進め方では追いつかない局面が増えてきました。
ここでは、4つの背景を順に整理します。
製品の複雑化により、MBSEによる一貫したトレーサビリティ管理が求められているため
自動車のソフトウェア定義化(SDV)や航空機の機能安全要件の増大により、1製品あたりの要件件数とインターフェース数が増加し、システム全体の複雑性が高まっています。
ISO 26262では、ハザード分析から安全要件の割り当て、ハードウェアアーキテクチャの定量評価まで、多段階にわたる安全分析と検証が求められます。
要件と検証結果を表計算ソフトで管理する従来の方法では、変更の波及や監査対応に追いつきにくくなっており、要件から設計・検証までを一貫して管理するMBSEの重要性が高まっています。
MBSE人材が不足し、モデリング工数の効率化が求められているため
MBSEは自動車、航空宇宙、防衛分野を中心に導入が進んできましたが、実務を担える人材の育成は依然として課題となっています。
新規プロジェクトでSysMLモデルを起こす作業には、ツール操作の習熟と、要件文書を構造化する設計判断の両方が求められるため、モデリング工数が初期フェーズのボトルネックになりやすい状況が続いてきました。
近年では、多くの研究機関や企業において、大規模言語モデル(LLM)を用いて要件記述からモデルの草案を生成する研究が進められており、専門人材不足を補う手段として期待されています。
LLMを活用することで、要件記述の整理やモデル草案の生成を支援し、人がレビューと修正を行う形へとモデリング作業を変えることが可能になりつつあります。
参考記事:Model Generation with LLMs: From Requirements to UML Sequence Diagrams(arXiv 2404.06371)
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SysML v2の登場により、AIとMBSEを統合しやすい技術基盤が整いつつあるため
MBSEの国際標準を策定するObject Management Group(OMG)は、2025年7月にSysML v2仕様を正式採択しており、次世代のシステムモデリング標準として普及が進みつつあります。
SysML v2は、従来の図的表現(v1)に加えて、堅牢なテキスト構文とAPIを備えており、ツール間連携や自動化を行いやすい構造を持つ点が特徴です。
テキスト構文と標準APIを利用することで、LLMによるモデル草案の生成や、モデル管理ツールとの自動連携を実現しやすくなります。
SysML v2の正式採択を受け、今後はツール選定や社内標準の見直しを検討する企業が増えると考えられます。
参考記事:Object Management Group Approves Final Adoption of the SysML V2 Specification(OMG, 2025-07-21)
国内外の政策・経営環境が、製造業のAI活用を後押ししているため
製造業におけるAI活用は、各国政府のAI戦略や企業評価制度とも連動する段階に入りつつあります。
欧州では、産業向けAIモデルの開発を支援する「AI Factories」や「AI Gigafactories」の整備が進められています。
米国でもNISTを中心に、製造システムの設計・分析を支える標準やテストベッドの整備が進められており、デジタルエンジニアリング基盤の高度化が推進されています。
日本国内でも、経済産業省などが選定する「DX銘柄2026」において、AIを活用した経営変革や事業変革への取り組みが、これまで以上に重視されるようになりました。
こうした動きを踏まえると、MBDやMBSEと生成AIを組み合わせた開発基盤の整備は、技術的な課題への対応にとどまらず、企業競争力を左右する重要な経営課題になりつつあるといえるでしょう。
参考記事:AI Factories(European Commission)
Manufacturing systems design and analysis(NIST)
「DX銘柄2026」選定に向けたDX調査(経済産業省)
従来のモデルベース開発が抱える課題
MBDやMBSEは、設計品質と開発スピードを高める手段として広く採用されてきましたが、製品のソフトウェア定義化や全社的な意思決定の高速化に対し、いくつかの構造的な課題を抱えたままです。
個別ツールの高速化や単発のシミュレーション支援だけでは、設計知識を製造現場や保守へ継続的につなげていくことが難しい局面が増えてきました。
ここでは、生成AI活用を考えるうえで踏まえておきたい4つの課題を整理します。
設計モデル・PLM・テスト結果がサイロ化し、設計知識を製造現場や保守へ横断的に活用しにくい
MBDで作ったシミュレーションモデル、PLMで管理する部品表(BOM)、テスト管理システムに記録された検証結果は、それぞれ別の管理システムに点在しがちです。
この状態が続くと、設計変更が量産工程の作業手順や保守記録へ与える影響を追跡しにくくなり、設計知識が次世代モデルや派生プロジェクトに引き継がれにくくなります。
エンジニアリング情報を専門に扱うAccurisも、テキストベースの情報を半構造化・構造化データへ変換し、PLMやALM、モデリングシステムが扱える形に整えることの重要性を指摘しています。
設計と製造のデータが分断されたままでは、生成AIが利用できる情報が限定されるため、AI活用の効果を十分に引き出しにくくなる点に注意が必要です。
参考記事:Digital Threading, Model-Based Systems Engineering, and AI(Accuris)
SysMLツールの学習コストが高く、設計前のモデリング負荷が新規プロジェクトのボトルネックになりやすい
SysML v1ベースのモデリングツールは、図的表現の習熟と、要件構造を整理する設計判断の両方を求めるため、導入時の学習コストが高いことが課題とされてきました。
新規プロジェクトの初期フェーズでモデリング工数が膨らむと、要件確定や設計レビューが後ろ倒しになり、開発スケジュール全体に影響を及ぼす可能性があります。
TCS(Tata Consultancy Services)が公開しているSDV(ソフトウェア定義型自動車)向けのMBSEレポートでは、生成AIによるSysML v2の記法の自動生成とCI/CDパイプラインの連携によって、アジャイルな開発とエンドツーエンドのトレーサビリティを支援できる可能性が示されています。
モデリング負荷の高さは、MBSEの導入を見送る要因にもなってきましたが、生成AIの活用によってその障壁を下げられる段階に入っているといえます。
参考記事:Accelerating SDV Architecture with Generative AI-powered MBSE(TCS Insights)
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概念実証(PoC)の多くが本番運用に移れず、AI投資の効果を十分に測定できないケースが少なくない
生成AIを設計・製造に組み込む取り組みの多くは、概念実証(PoC)止まりで本番運用への移行が課題となるケースが少なくありません。
Cognizant社のレポート「AI: From Data to ROI」でも、AI投資の回収までには平均17か月を要し、データ基盤や人材、業務プロセスの整備が成果創出の鍵になると指摘されています。
MBD分野では、シミュレーションモデルとAIモデルを組み合わせる研究が活発化している一方で、設計プロセス全体を通じた適用や、その効果を産業レベルで定量的に評価した事例はまだ限定的です。
PoCを本番運用へ展開するためには、AIによってどの工程の時間やコストがどの程度改善されたかを評価できる指標を、初期段階から設計しておくことが重要です。
参考記事:AI: From Data to ROI(Cognizant)
Artificial intelligence for model-based systems engineering: A scoping review(ScienceDirect)
自然言語の要件文書やレガシーな設計記録が機械可読な形に整理されておらず、AIが利用できる知識資産になっていない
MBDの現場には、Word・Excel・PDFで作成されたレガシーな設計記録や、過去の試験報告書、メールでのやりとりなど、自然言語の情報が大量に残っています。
これらの情報は、現場のエンジニアにとっては貴重なノウハウですが、AI学習に使うにはタグ付けや構造化が必要となる場合が多いです。
Colorado State Universityの研究チームが提案する「GenAI Workbench」フレームワークでは、ドキュメントから抽出した要件、3D形状の境界表現(B-rep)、システムグラフを単一のデジタルスレッドとして統合し、視覚言語モデル(VLM)で初期アーキテクチャを生成する仕組みが整理されています。
学習データの整理は地味な作業に見えますが、生成AIをMBDに組み込むうえでは、設計知識の構造化が成果に大きく影響すると考えられます。
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「モデルベース開発への生成AI活用」の再定義|MBSE 2.0では、AIの適用範囲・基盤・役割分担が変わる
モデルベース開発に生成AIを取り入れる動きは、ツールの動作を速くする支援から、設計と製造をデジタルスレッドで連動させて管理するMBSE 2.0へと、その意味合いを大きく変えてきました。
ここでは、①AIを適用する範囲、②AIが利用するモデリング基盤、③AIの実行主体、④人とAIの役割分担、という4つの観点から整理します。
何をどう変えるのかが具体的に見えてくると、自社のMBD・MBSEに生成AIをどこから組み込むかの判断が立てやすくなります。
AI活用の対象範囲の再設計|個別工程の支援から、デジタルスレッドへの変更
MBDにおけるAI活用は、これまで個々のシミュレーションを高速化する用途が中心でしたが、いまや要件・設計・検証・製造を貫くデジタルスレッドの全体へと適用範囲が広がりつつあります。
Boeingは「Model Based Engineering(MBE)Supplier Integration」のページで、MBEとデジタルスレッドの考え方を、サプライヤーとの統合戦略の中核に位置づけています。
具体的には、サプライヤーのモデルやデータを標準化された形で相互運用し、ライフサイクル全体にわたって成果物間の整合性を維持する取り組みを進めています。
このようにAIを組み込む対象を、シミュレーションの一部から設計から製造までを貫く流れ全体へ広げていくことが、MBSE 2.0を特徴づける重要な考え方の一つです。
参考記事:Model Based Engineering (MBE) Supplier Integration(Boeing Suppliers)
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モデリング言語の再設計|図的表現が中心のSysMLから、テキスト構文を備えるSysML v2への変更
モデリング言語そのものも、生成AIに合わせて再設計が進んでいます。
OMGが承認したSysML v2の仕様では、従来の図的表現に加え、テキスト構文と標準化APIが整備されており、LLMがコードを直接読み書きできる構造に進化しました。
これにより、要件文書を入力してSysML v2のテキストを出力させ、人がレビュー・修正したうえでGitなどのバージョン管理システムにコミットする、というソフトウェア開発に近い進め方がモデリングにも持ち込めるようになります。
今後は、SysML v2への移行と生成AIの活用を組み合わせた開発プロセスの検討が進む可能性があります。
参考記事:Object Management Group Approves Final Adoption of the SysML V2 Specification(OMG)
AIの動き方の再設計|受動的な生成AIから、自律的に計画・実行するエージェント型AIへの変更
生成AIの動き方も、人がプロンプトを与えてはじめて出力する受動的な使い方から、目的を与えると自ら計画を立てて複数の手順を実行する自律的な使い方へと変わってきました。
ドイツのFZI Research Center for Information Technologyの研究者らが2026年にarXivで公開したLLM Risk Assessment Framework(LRF)では、LLMの自律性を「Assisted(コンテキスト内の支援のみ)」「Guided(推奨・代替案の提示)」「Supervised(定義タスクの独立実行)」「Fully Automated(意思決定と実行を主導)」の4段階で整理しています。
MBDの領域では、設計レビューの叩き台生成はGuided、要件文書からSysML v2の自動生成はSupervised、というように、用途に応じて自律性レベルを設計することがリスク管理の前提となります(LRFの活用は後段の「モデルベース開発に生成AIを活用するうえでの注意点」で触れます)。
エージェント型AIをMBDに組み込む場合は、どこまでをAIに委ね、どこから人が判断するかを最初に設計しておくと運用が安定します。
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人とAIの役割分担の再設計|エンジニアがAIの叩き台を最終承認するヒューマン・イン・ザ・ループへの変更
人とAIの役割分担も、AIが「答え」を返すのではなく、「叩き台」を返してエンジニアが最終承認するヒューマン・イン・ザ・ループ(HITL)の形に変わってきました。
Colorado State UniversityのGenAI Workbench研究では、設計者がソースドキュメントを取り込むと、システムが要件を抽出し、視覚言語モデル(VLM)で設計構造マトリックス(DSM)の初期版を生成する流れが整理されています。
ここで重要なのは、初期版を「完成品」とせず、設計者が修正・追記・削除を繰り返すことで完成へ近づける運用に置いている点です。
機能安全規格や顧客監査では、誰がどの判断をしたかが厳しく問われるため、AIの自動出力をそのまま設計成果物として採用するのではなく、エンジニアの承認履歴とセットで記録する仕組みづくりが欠かせません。
生成AIで進化するモデルベース開発|5つのアプローチ
ここまで整理してきた背景・課題・再定義を踏まえると、生成AIをモデルベース開発に組み込む実務的なアプローチは大きく5つに整理できます。
一例として、設計上流から運用までのMBDの流れに沿って、①ジェネレーティブデザインによる部品最適化、②SysML v2コードの自動生成、③デジタルツインと合成データ、④設備センサーの時系列データを使った異常検知、⑤エージェント型AIによる設計レビューとトレードオフ分析、の順で進めると、自社のどこから着手するかが見えてきます。
各アプローチは独立して導入することも可能ですが、デジタルスレッドの考え方で互いを連動させると、効果が積み上がっていきます。
ジェネレーティブデザインによる部品・構造の最適化と軽量化
ジェネレーティブデザインは、強度・剛性・重量・コストなどの制約を入力として、AIが多数の設計候補を自動生成する手法です。
Airbusのジェネレーティブデザイン事例では、航空機キャビンパーティションの構造部品で、安全基準を維持しながら大幅な軽量化が実現されており(詳細は次章)、材料コストと燃費の両面で効果が出ています。
設計エンジニアが手作業で構造を最適化する場合、限られた時間の中で試せる候補は数件に留まりがちですが、ジェネレーティブデザインを使えば、数百から数千通りの候補を比較検討することが可能になります。
国内製造業でも、車両部品・装置筐体・ブラケットなど、強度と軽量化のバランスが求められる領域から導入を進めると、効果を測定しやすいでしょう。
SysML v2コードの自動生成とCI/CDパイプラインへの統合
SysML v2のテキスト構文と標準化APIは、生成AIによるコード自動生成と相性が良く、ソフトウェア開発のCI/CDパイプラインに直接組み込める点が大きな強みです。
業界の実装レポートでは、自然言語の要件文書からLLMがSysML v2のテキストを生成し、Gitなどのバージョン管理システムで変更履歴を残しながら、CI/CDで自動検証を回すアプローチが整理されています。
これにより、要件・設計・コードの整合性を継続的に確認できるようになり、要件変更が後工程で見つかる手戻りを抑える効果が期待できます。
社内にCI/CDの土壌があるソフトウェア開発組織では、MBSEのモデリング工程を自然な形で取り込めるため、SDV(ソフトウェア定義型自動車)や産業用組込みソフトの領域から着手するのが現実的です。
デジタルツインと合成データ生成による仮想工場・仮想プロトタイピング
デジタルツインは、物理的な装置や工場を仮想空間に再現し、シミュレーションで挙動を検証する仕組みです。
BMWは、NVIDIAのDGXシステムとOmniverseを組み合わせ、製造業向けの合成データセットを大規模に運用しているほか、AWS上に構築した「BMW Data Interpreter」のようなノーコード生成AIアプリケーションも展開し、全部門の従業員がデータ分析を回せる体制を整えています。
合成データを使うことで、現実の現場では収集が難しいエッジケース(異常時のセンサー挙動、稀な部品配置など)に対しても、安定して動くAIを作ることが可能になります。
国内製造業でも、新規ライン立ち上げ時の動線シミュレーションや、設備改修前のレイアウト検証など、物理的な変更を加える前に判断材料を増やす用途から始めると、投資効果を測定しやすくなります。
設備センサーの時系列データを使った異常検知と予知保全
MBDで設計した制御ソフトの挙動を、量産後のセンサーデータと突き合わせて検証することは、品質保証と予知保全の両面で価値の高い取り組みです。
自律型エージェントとAIを組み合わせて、文献レビューから仮説生成、実験設計、シミュレーションまでの研究サイクルを加速させる構想は、NASAの科学研究など他分野でも示されており、製造業の異常検知・原因分析にも応用できる発想として参考になります。
シミュレーションモデルと量産データを行き来できるようになると、設計と保全の境界を越えてエンジニアリング知見を蓄積できるようになるでしょう。
参考記事:Accelerated Knowledge Discovery: A Vision for NASA Science(NASA NTRS)
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MBSE 2.0:生成AIによる設計レビュー・トレードオフ分析の高度化
5つ目のアプローチは、生成AIを活用した設計レビューと設計案評価の高度化です。
MBSE 2.0論文では、生成AIを統合したMBSEは、要件の自動抽出、設計案の生成、一貫性・制約条件の検証までを支援する方向へ進むと整理されています。
たとえば、車両の制御モジュールを設計する際、燃費・応答性・コスト・部品点数といった複数の指標をAIが並行に評価し、設計者に対して「燃費を優先するならこの構成、応答性を優先するならこの構成」という選択肢を提示するイメージです。
最終的な選択は人が行いますが、AIが網羅的に候補を評価しておくことで、設計レビューの場が「叩き台に対する判断会議」に変わり、議論の密度が上がります。
参考記事:MBSE 2.0: Toward More Integrated, Comprehensive, and Intelligent MBSE(MDPI Systems)
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モデルベース開発に生成AIを活用するメリット
MBDに生成AIを組み込むメリットは、エンジニアリング工数の短縮といった単一の指標では捉えきれません。
プロジェクト期間の圧縮、製品性能の向上、AIモデル学習効率の改善、設計と製造の判断サイクル迅速化という4つの効果が同時に立ち上がります。
ここでは、海外大手の公開事例を交えつつ、それぞれのメリットを順に整理します。
エンジニアリング工数を削減し、設計・検証のリードタイムを短縮できる
生成AIをMBDに組み込むことで得られる代表的な効果は、エンジニアリング工数の削減です。
Siemensは「Industrial Copilot」を中核に、設計から計画、運用、サービスに至るすべてのフェーズにAIを組み込み、産業オートメーションの効率化を進めています。
要件整理から制御コード生成、ドキュメント作成までを生成AIが補助することで、エンジニアの作業時間を本質的な判断に振り向けられるようになるため、特に、モデリングや設計文書作成などに多くの工数を要している組織では、効果が期待されます。
国内製造業でも、設計期間の短縮効果は経営層に説明しやすい指標になるはずです。
参考記事:Industrial Artificial Intelligence – Driving Industries Forward(Siemens)
部品の重量を最大45%削減し、燃費・エネルギーコストの低減につなげられる
ジェネレーティブデザインによる部品最適化は、製品ライフサイクル全体のコスト構造に直接影響します。
航空宇宙の領域では、ジェネレーティブデザインを使った構造部品で、安全基準を維持しながら大幅な軽量化を実現した事例が公表されており、材料コストの削減と燃費の向上が同時に期待できる手法として注目を集めています(具体的な数値は後段の「Airbus|デジタルツインと生成AIで設計・製造・運用をつなぐ」で扱います)。
製品の重量は、製造時の材料コストだけでなく、運用時のエネルギー消費や、輸送時のCO2排出量にも直結するため、軽量化は、コスト削減や環境負荷低減と結び付けて評価しやすいテーマと考えられます。
国内の自動車・産業機械メーカーでも、構造部品やブラケットなどの最適化から始めると、設計部門の成果を経営層に説明しやすくなるでしょう。
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合成データ生成でAIモデルの学習効率を高め、現実では収集しにくいエッジケースに対応できる
製造現場でAIモデルを育てる際の壁の1つは、学習に使える「異常時のデータ」が不足していることです。
BMWは、自社の製造プロセスに合わせた合成データセットを大規模に構築・運用しており、現実では収集しにくい異常時のセンサー挙動や、稀な部品配置のシナリオに対しても安定して動くAIを作る取り組みを進めています(具体的な事例は後段の「BMW|全社AIプラットフォームと合成データセットSORDI.aiで設計と製造を統合する」で扱います)。
合成データを使うことで、AIの学習サンプルを物理現場での収集だけに頼らずに揃えられるようになり、データ収集にかかる時間とコストを大きく圧縮できる点がメリットです。
学習データの不足を生成AIで補えるようになれば、AI導入の意思決定が遅れがちだった領域でも、PoCから本番運用への移行を後押しできるはずです。
非構造化データを構造化することで、設計と製造の判断サイクルを早められる
現場に蓄積された設計レビュー記録、過去の試験報告書、サプライヤーとのメールなどの非構造化データを、AIが構造化データに変換することで、設計と製造の判断サイクルが速くなります。
テキストベースのエンジニアリング記録をPLMやALMが読める形に変換すると、設計変更が他の部品や工程に与える影響を素早く把握できるようになり、影響評価が短時間で済むようになります。
その結果、設計レビューの場で複数の代替案を比較する余裕が生まれ、製品品質の向上にもつながっていきます。
非構造化データの整理は地味な作業に見えますが、デジタルスレッドを支える土台として、生成AI活用の効果を底上げする要素です。
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熟練工の技能伝承を成功させるには|生成AIの恩恵
海外大手のモデルベース開発×生成AI事例
生成AIを設計・シミュレーション・運用へ組み込む取り組みは、MBDやデジタルエンジニアリングを推進する欧米製造業で実践フェーズに入りつつあります。
ここではSiemens、BMW、Airbus、Boeingの4社の取り組みを、企業公式情報や政府・大学系の一次情報に基づいて整理します。
各社の事例には、自社のMBD・MBSEに生成AIを取り入れる際の具体的な手がかりが詰まっています。
Siemens|Industrial Copilotで設計・エンジニアリングを効率化する
Siemensは、MicrosoftのAzure OpenAI Serviceを組み合わせて展開する「Industrial Copilot」によって、設計・計画・エンジニアリングから運用・保守まで、産業バリューチェーン全体でAIを活用する取り組みを進めています。
MBDでは、設計モデルから制御ソフトウェア、運用までをデジタルにつなぐことが重要ですが、Industrial Copilotは設計・エンジニアリングから運用までを支援する生成AIとして位置付けられており、モデルベース開発やデジタルエンジニアリングと親和性の高い取り組みの一つといえます。
Industrial Copilotは、設計・計画・エンジニアリングから運用・保守までを支援する生成AIアシスタントで、PLC制御コードの生成などを支援し、2025年にはHermes Awardを受賞しました。
参考記事:Siemens and Microsoft scale industrial AI(Siemens Press)
Siemens Industrial Copilot wins Hermes Award 2025(Siemens Press)
BMW|全社AIプラットフォームと合成データセットSORDI.aiで設計と製造を統合する
BMWは、全社でAIアプリケーションを開発・運用できる共通AI基盤を整備し、製造現場を中心としたAI活用を進めています。
NVIDIAの公開事例によれば、BMWはNVIDIA DGXシステムとOmniverseを活用し、製造業向けとして世界最大級の合成データセット「SORDI.ai」を構築しました。
このデータセットを用いてAIモデルを学習させることで、現実では収集しにくい多様な生産シナリオを再現し、品質管理や物流、製造工程の最適化に活用しています。
BMWでは、NVIDIA Omniverseを活用して工場や生産設備を仮想空間上で再現・検証するデジタルツインも推進しており、実機導入前にモデル上でレイアウトや物流を最適化する取り組みを進めています。モデルを活用して設計・検証を行うという点で、モデルベース開発やデジタルエンジニアリングと親和性の高い事例といえます。
合成データの活用は、AIの学習データ不足という構造的な課題に対する有効な解決策であり、国内製造業がBMWの取り組みから学べる点は多いはずです。
参考記事:Case Study: NVIDIA Boosts BMW Group’s Production Efficiency with AI(NVIDIA)
BMW Group Starts Global Rollout of NVIDIA Omniverse(NVIDIA)
Airbus|デジタルツインと生成AIで設計・製造・運用をつなぐ
Airbusは、DDMS(Digital Design, Manufacturing & Services)やデジタルツインを活用し、設計・製造・運用までをデジタルでつなぐデジタルエンジニアリングを推進しています。
Airbusの公式記事によれば、ジェネレーティブデザインと3Dプリント(積層造形)を用いて、A320向けのキャビンパーティションの重量を従来設計比で45%(約30kg)削減することに成功しています。これは、構造的な強度を保ちながら燃費改善にもつながる設計を実現していると言えます。
加えて近年は、生成AIを活用したエンジニアリング支援や、製造手順書(Standard Operating Instructions)を自然言語で検索する支援なども実証しており、設計・製造・保守における知識活用の効率化を図っています。
航空宇宙のように高い安全要件が課される業界での実例は、自動車・産業機械の品質保証にも応用しやすいといえるでしょう。
参考記事:Pioneering bionic 3D printing(Airbus, 2016)
How Airbus uses generative artificial intelligence to reinvent itself(Airbus, 2024)
Boeing|デジタルスレッドと非構造化データの構造化でMBSEの基盤を強化する
Boeingは、製品の概念設計から納入後の運用までを一貫して扱うMBE(Model-Based Engineering)とデジタルスレッドの考え方を、サプライヤー戦略の中核に置いています。
Boeing Suppliersのページでは、MBEとデジタルスレッドを通じて、サプライヤーのモデルやデータをBoeingのMBE環境と標準化された形で相互運用し、ライフサイクルを通じて成果物の整合性を管理する取り組みが紹介されています。
モデルを単なる設計成果物ではなく、要求・解析・製造・保守までを結ぶ「single source of truth(信頼できる唯一の情報源)」として扱う考え方は、MBSEやデジタルスレッドの中核となる考え方です。こうした基盤が整備されることで、生成AIも設計資産を横断的に活用しやすくなります。
このようにデジタルスレッドによってモデルや設計データが体系的に管理されることで、生成AIも要求仕様や設計情報、試験結果などを横断的に参照しやすくなり、設計レビューや技術文書検索などへの活用が期待されます。
ティア1サプライヤーとの協調設計が求められる業界では、Boeingが進めるサプライチェーン全体を含めたMBE・デジタルスレッドの考え方は、モデルベース開発を企業間へ拡張する参考事例といえます。
参考記事:Model Based Engineering (MBE) Supplier Integration(Boeing Suppliers)
各国政府・公的機関が示す方針|EU AI Factories・NIST・NASA・経済産業省DX銘柄2026
MBDと生成AIの活用は、企業独自の取り組みに加え、各国政府や公的機関の方針と連動させて進めることが重要です。
ここでは、欧州AI Factories、米国NISTのMBE/QIF標準化とAI製造センター、NASAのMBSEオントロジーIMCEと自律型エージェント研究、そして経済産業省「DX銘柄2026」の評価軸の方向性の4点を順に整理します。
監査対応や顧客への説明責任を考えるうえでも、これらの国際的な方針を把握しておくことが欠かせません。
欧州委員会|100億ユーロ規模のAI Factoriesと産業向けAI基盤を整備
欧州委員会は、加盟国・関連国と共同で、スーパーコンピューティング基盤と「AI Factories」に2021〜2027年で総額100億ユーロを投じる計画を、EuroHPC共同事業を通じて進めています。
AI Factoriesは、欧州全土にAIスーパーコンピューティング環境を整備し、スタートアップや研究機関、産業界が大規模なAIモデル学習を行える共通基盤を提供する取り組みです。
製造業では、予知保全や生産最適化、需要予測に加え、MBDで活用されるデジタルツインや大規模シミュレーションと生成AIを組み合わせた高度な設計・製造を支える計算基盤としても期待されています。
これは、欧州の「AI Continent Action Plan」の一環として位置づけられており、欧州系サプライヤーと取引のある国内製造業にとっても、今後の動向を把握しておく価値があります。
参考記事:AI Factories(European Commission)
米国NIST|MBE/QIF標準化と、製造・サイバーセキュリティを支えるAI製造センターの整備
米国国立標準技術研究所(NIST)は、モデルベースエンタープライズ(MBE)と品質情報フレームワーク(QIF)の標準化を推進し、製造業のデジタル化を支える基盤づくりを進めています。
2025年12月には、NISTが非営利のMITREコーポレーションと連携し、2,000万ドルを投じて、製造業の生産性向上を担う「AI Economic Security Center for U.S. Manufacturing Productivity」と、重要インフラのサイバー防御を担う「AI Economic Security Center to Secure U.S. Critical Infrastructure from Cyberthreats」の2つのセンターを設立しました。そして、製造業向けAIの安全性評価とベンチマーク整備、サイバーセキュリティ対応の強化を進めています。
積層造形では、製品定義、デジタルツイン、機械学習を含む高度なインフォマティクスとAIを統合する研究も進められています。MBDで活用されるモデルやデジタルスレッドとも親和性が高く、設計・製造・品質情報をAIで横断的に活用する基盤技術として期待されています。
国内のサプライヤーが米国市場に製品を出す場合、これらのNIST標準への対応が取引条件として求められるケースも今後増えていくと考えられます。
参考記事:NIST Launches Centers for AI in Manufacturing and Critical Infrastructure(NIST)
NASA|MBSEオントロジーIMCEと、自律型エージェントを組み合わせた科学研究の加速
米国航空宇宙局(NASA)は、JPLのMBSE(モデルベースシステムズエンジニアリング)実践を支援するオントロジー「IMCE(Integrated Model-Centric Engineering)」を開発しており、SysMLやUMLで構築したシステムモデルを横断的に検索・推論できる知識基盤の整備を進めています。
また、Moon to Mars計画では、文書中心の開発からモデル中心の開発への移行を進めるため、MBSEを早期から導入し、再利用可能なモデルを活用した効率的なシステム開発に取り組んでいます。
一方、「2025-2026 NASA Science Plan」では、大規模言語モデル(LLM)を含むAI技術を科学研究やデータ活用に取り入れる方針が示されています。
NASAは、MBSEによるモデルベース開発とAI活用を並行して推進しています。これは、設計モデルやデジタルスレッドと生成AIを連携させた知識活用や意思決定支援を考えるうえでも参考となる取り組みだと言えます。
参考記事:IMCE Ontological Modeling Framework(NASA Software Catalog)
Benefits of Introducing MBSE Early Into NASA’s Lifecycle Phases for the Moon to Mars Architecture(AIAA)
2025-2026 NASA Science Plan
経済産業省|「DX銘柄2026」で生成AI・AIの利活用を評価軸として重視
経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「DX銘柄2026」では、生成AIを含むDXの取り組みが評価の観点として重視されるようになっています。
DX銘柄では従来から経営変革につながるDXを評価してきましたが、DX銘柄2026ではAIの利活用が新たな評価ポイントとしてより重視されるようになりました。
設計領域でMBDとAIを組み合わせて設計・開発プロセスの高度化を進める取り組みは、企業全体のDXやAI活用の実践例として対外的に説明できるテーマの一つとなります。
経営層が主導する生成AI戦略を、設計部門のMBD・MBSEと連動させて整理しておくことが、国内製造業の市場評価にも直結する局面に入ったといえます。
参考記事:「DX銘柄2026」選定に向けたDX調査の項目を公表します(経済産業省)
エムニの取り組み|モデルベースを支える製造業向け生成AI実装支援
エムニは、京都大学・松尾研発のスタートアップとして、製造業の現場とITの間にある分断を、生成AIの実装力で埋める役割を担ってきました。
設計上流の知識整理から、量産現場の異常検知、知財領域でのLLM活用、そして爆速デモなど、製造業におけるAI実装の幅広い経験を有しています。
ここでは、MBDに生成AIを組み込む際に参考になる、エムニの代表的な取り組みを3つ紹介します。
データ読み取り・標準化AI|研究・設計や保存データをAIで構造化し、設計知識の再利用を支援する
エムニは、論文や研究データ、自由形式のExcelなどを生成AIで読み取り、情報を抽出・標準化する取り組みを進めています。
設計書のフォーマットや表記がプロジェクトごとに異なる現場では、過去の知見を再利用する際に、人手で内容を確認する負担が課題となっています。
このような非構造化データを生成AIで構造化することで、過去の設計判断とその根拠を、新しい設計レビューの場ですぐに参照できるようになります。
住友電気工業との取り組みでも、エムニは研究開発領域における生成AI・MI活用を支援し、論文や研究データの再利用を通じて、材料開発の効率化や研究スピード向上に取り組んでいます。
また、ダイセルとの取り組みでは、設備保全関連文書や保全履歴、関連法規などを生成AIで活用し、設備保全に関するドキュメント作成やレビュー業務を効率化するシステムを共同で開発しています。設備保全分野に蓄積された知識を整理・活用しやすくすることで、保全業務の効率化や知識継承を支援しています。
▼住友電工様の生成AI・MI活用による製造業R&D変革に関する案件事例はこちら
製造業R&Dを変える生成AI・MI活用
▼ダイセル様の化学プラント業務効率化プロジェクト(生成AI活用)に関する案件事例はこちら
【京大/松尾研発スタートアップ】エムニとダイセルが、生成AIを活用して化学プラントの設備保全業務を効率化するプロジェクトを開始
特許翻訳特化型LLMとパテントマップ自動生成|設計・研究開発の上流で先行技術を高速に把握する
製品設計や研究開発の上流では、競合の先行技術や特許状況を素早く把握できることが、新規プロジェクトの方向性を左右します。
エムニは、ファインチューニングを用いた特許翻訳特化型LLMの開発において、GPT-4oや汎用翻訳モデルを上回る性能を達成しています。
これにより、海外特許を日本語で効率よく確認できるようになり、知財調査や技術調査の効率化が期待できます。
また、パテントマップの自動生成にも取り組んでおり、従来は外部委託で数百万円程度・数週間から約1か月を要していた特許調査を、数時間から1日程度まで短縮できる試算も示しています。
▼特許翻訳特化型LLM開発プロジェクトに関する案件事例はこちら
【京大発・松尾研発スタートアップ エムニ】ファインチューニングを用いた特許翻訳特化型LLMの開発において、GPT-4oや翻訳モデルを凌駕する性能を達成
爆速デモで実現性を可視化し、投資判断と現場合意を早める進め方
エムニの強みのひとつは、最短で手元で動くプロトタイプを作る「爆速デモ開発」です。
紙上の提案にとどまらず、実際に動作するデモシステムを短期間で構築し、生成AIの実現性や精度を早い段階で確認できる進め方を採用しています。
住友電気工業との研究開発領域における生成AI活用プロジェクトでも、エムニは2件のプロジェクトを実施完了しており、研究開発の現場で実際に使われるシステムの構築を経験してきました。
爆速デモにより生成AIの実現性を早期に確認できるため、PoCから実装に向けた検討を迅速に進めやすくなります。
▼住友電気工業株式会社の研究開発領域向け生成AIプロジェクトに関する案件事例はこちら
【京大/松尾研発スタートアップエムニ】住友電気工業株式会社と研究開発領域における生成AI活用プロジェクトを2件実施完了
モデルベース開発に生成AIを活用するうえでの注意点
MBDに生成AIを組み込むことで、設計から製造までにまたがる業務効率化が期待できる一方、データ品質・情報漏洩・PoC止まり・国際フレームワーク対応など、事前に検討すべき課題も少なくありません。
ここでは、4つの注意点を整理し、それぞれに対する具体的な対応策を紹介します。
注意点を初期段階から考慮したプロジェクト設計は、生成AIを継続的かつ安全に運用するための重要な要素となります。
学習データの品質不足とハルシネーションに注意し、人が最終承認する仕組みを設ける
生成AIをMBDに組み込む際の大きな注意点は、学習データの品質不足と、もっともらしい誤りを生成するハルシネーションのリスクです。
設計や検証の場面でAIが誤った内容を出力した場合、見落とせば製品の安全性に直結する判断ミスにつながりかねません。
前段で紹介したLRF(AIの自律性とシステム影響度に応じて監視レベルを整理する考え方)のように、AIの利用範囲に応じて人間の監視や検証方法を段階的に設計すると、リスクを管理しやすくなります。
設計レビューや検証の場では、AIの出力をそのまま採用せず、エンジニアが最終承認する「ヒューマン・イン・ザ・ループ」の仕組みを設けることが基本となります。
機密性の高い設計データでは、セキュリティ要件に応じてオンプレミスや専用環境を選択する
車両設計書、試験報告書、サプライヤー情報など、MBDで扱うデータの多くは機密性が極めて高く、AIで扱う場合は、利用規約や契約条件を確認し、一般的なサービスへ安易に入力しないよう注意が必要です。
機密データを扱う領域では、AIベンダーとの特別な法人契約、専用テナントの利用、または自社専用サーバーで動かすオンプレミスLLMの活用を選択肢に含めるべきです。
オンプレミスLLMは、初期構築の費用や運用ノウハウが必要となる一方、設計データを社外に出さずに生成AIを活用できる点で、長期的なリスク管理の観点から価値があります。
国内製造業では、サプライヤーとの秘密保持契約(NDA)やデータ取扱規程に加え、AIへ入力する設計データが輸出管理(EAR・外為法)の対象となる可能性も踏まえ、データの取り扱い方針を事前に明確化しておくことが望まれます。
▼オンプレミス環境でのAI利用についてはこちら
オンプレミスLLMとは|情報漏洩を防ぎつつ競争優位性あるAIを構築
PoC止まりを防ぐため、全社展開を見据えた評価設計を行う
MBDへの生成AI導入も、他のAI活用と同様に、PoCで止まってしまうリスクがあります。
PoCを成功させるだけでは設計プロセス全体の生産性向上にはつながりにくく、投資効果が経営指標に繋がりにくい場合があります。
PoCの段階から、本番運用後にどの工程の時間と費用がどの程度短縮されるかを試算し、全体への波及効果を前提とした評価軸を設けることが必要です。
短期間で実用性を確認できるプロトタイプ開発と、ロードマップ上で段階的にスケールを広げていく進め方を組み合わせることで、PoCの先で投資を継続する判断が立てやすくなるはずです。
米国NIST AI RMFやEU AI法など国際フレームワークから外れたガバナンス運用に注意する
生成AIのガバナンスは、自社の社内規程だけで完結する話ではなく、米国NIST AI Risk Management Framework(RMF)やEU AI法などの国際的なガイドラインや法規制も参考にしながら、組織の状況に応じた体制を整備することが重要です。
欧州委員会の「European approach to artificial intelligence」では、信頼できるAIの実現に向けた規制枠組みと、リスクベースの考え方が整理されており、グローバル展開する企業はこの考え方を社内ガバナンスに反映することが望まれます。
特に自動車・航空宇宙・産業機械など海外との取引が多い業界では、国際的なガイドラインや法規制との整合性を定期的に確認する仕組みを整備することが望まれます。
リスク管理を後回しにすると、海外案件での提案段階で取引機会を失う事態にもつながりかねないため、AI導入の早い段階からガバナンスを設計に組み込んでおくことが望まれます。
参考記事:European approach to artificial intelligence(European Commission)
次世代モデルベース開発の鍵は、SysML v2とAIエージェントの活用にある
MBDへの生成AI活用は、個別ツールの高速化からSysML v2と自律型エージェントを組み合わせた「MBSE 2.0」へと広がりつつあります。
AIモデル単体の性能だけでなく、開発全体をつなぐデジタルスレッドや、人が最終判断を行う運用設計が重要になります。
企業はまず、優先工程でのジェネレーティブデザインやモデル生成支援を導入し、小規模なPoCから効果を検証することが重要です。
そのうえで、PLMとモデリングツールを横断するデータ基盤の整備、NIST AI RMFやEU AI法を踏まえたガバナンスの構築、AIの出力を適切に評価できる人材育成を進める必要があります。
次の段階としては、優先工程で小さなデモを動かし、投資判断と現場合意を早めながら段階的に対象範囲を広げていく進め方が現実的です。
もし自社のどの工程からMBDの生成AI活用に着手すべきかがわからない場合や、PoCから本番運用へのスケールアップで詰まっている場合は、ぜひエムニにご相談ください。
エムニへの無料相談のご案内
エムニでは、製造業をはじめとする多様な業種に向けてAI導入の支援を行っており、100社以上の支援実績があります。

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