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2025-04-04ローカル生成AIとは?メリット/デメリット・自社事例を紹介

近年、生成AIの急速な進化とともに、自社内やオフライン環境で利用する「ローカル生成AI」が、業務効率化やセキュリティ強化の観点から大きな関心を集めています。
ここでは、ローカル生成AIの基本概念から、導入企業が注目する背景、メリット・デメリット、具体的な活用事例まで、多角的に深掘りして解説していきます。
ローカル生成AIとは?
従来、大規模言語モデル(LLM)を代表とする生成AIは、膨大なデータセットを用いて高コストの計算を行う必要があったため、クラウド型のものしか存在していませんでした。
しかし、ローカル生成AIを用いると、プライバシー保護・カスタマイズ性の向上・運用コスト効率の向上などのメリットが得られるため、近年では注目が集まりはじめました。
これらの特徴は、企業が抱えるセキュリティや業務効率の問題解決に貢献します。
クラウド型生成AIとローカル生成AIの違い
クラウド型生成AIとローカル生成AIの違いは以下の表のようにまとめられます。
項目 | クラウド型生成AI | ローカル生成AI |
運用環境 | 外部サーバー上、インターネット経由で利用 | 社内サーバーやPC上、オフラインで利用 |
データの処理 | 外部にデータ送信され、クラウド上で処理 | 全て特定のローカル環境内で完結し、データ漏洩のリスク低減 |
更新と保守 | 自動アップデートやサービス提供者による管理が可能 | 自社でのアップデートや保守作業の実施が必要 |
運用コスト | 従量課金制や使用量に応じた料金体系 | 初期投資後は低コストで安定した運用が可能 |
この違いは、企業のニーズに合わせた柔軟なシステム構築を可能にし、金融機関や地方公共団体、法律事務所など、特に機密性の高い情報を取り扱う業種での採用が進む要因となっています。
ローカル生成AIのメリット
ローカル生成AIは、従来のクラウド型と比べて数多くのメリットを有しており、企業のデジタルトランスフォーメーション推進において大きな役割を果たしています。
①高いセキュリティとプライバシー保護
クラウド型AIは、外部サーバーへ送信されたデータの漏洩や不正アクセスというリスクが存在しており、AI導入の大きな懸念材料の一つとなっていました。
ですが、ローカル生成AIは、全てのデータ処理を自社のオンプレミス環境で完結させるため、外部へのデータ送信を一切行いません。このため、企業は機密情報を厳重に管理しながら、AI技術の利点を存分に享受することが可能となります。
②独自データ活用による自由度の高いカスタマイズ性
多くのクラウド型生成AIが幅広い分野のデータを元に作られている一方で、ローカル生成AIの場合、企業はその企業独自のデータを活用し、業務内容に最適化されたAIモデルを構築することができます。
これにより、一般的なクラウド型AIでは実現しにくい、特定の業務やビジネスフローに即した、より精度の高い応答や支援が期待されます。
このようなカスタマイズ性の高い、差別化されたAIモデルの構築は、企業が競争力を維持・強化する上で有効な要素となると考えられます。
③運用コストの削減と高いパフォーマンス
クラウド型の生成AIは従量課金制が主流であり、長期的な運用による経済的な負担が生じる場合があります。
一方、ローカル生成AIは、初期投資後には社内で一括に管理されるため、定常的な支出を大幅に軽減できます。さらに、システム管理者がリアルタイムで状況を把握し、既存のIT部門とスムーズな連携を行うことで、業務全体の効率が向上します。
加えて、システムの最適化やリソースの柔軟な配分が可能なため、実際のパフォーマンス向上とコスト削減の両立が実現できます。
ローカル生成AIのデメリット
ローカル生成AIは、多くのメリットを有する一方で、導入・運用にあたっていくつかの課題や制約も存在します。
①リアルタイム処理の制約と柔軟性の低さ
従来のクラウド型生成AIは、常に最新のデータを反映し、リアルタイムでの処理が求められる場面に優れた性能を発揮します。しかし、ローカル生成AIはオンプレミス環境で運用されるため、ネットワークの外部連携が限定され、大規模な計算資源を柔軟に活用することが難しくなります。
その結果、大量のデータの処理や急激な負荷変動時には応答速度が低下する可能性があり、業務プロセスの柔軟性が損なわれるリスクも考慮しなければなりません。
こうした課題は、運用環境の設計段階で十分な対策を講じる必要がある重要なポイントです。
②高度な専門知識を要する運用体制
ローカル生成AIの導入および運用には、システムの構築やモデルの最適化、継続的な監視・メンテナンス、セキュリティ対策など、クラウドサービスでは自動化される工程を自社で担う必要があります。これらの作業は、単なるITスキルではなく、AI技術や機械学習に関する高度な専門知識を要求します。社内に十分なスキルを持つ人材が確保できない場合、外部の専門家へ依頼する必要があり、結果として導入コストの増大やプロジェクト期間の延長といった影響が生じる恐れがあります。
そのため、企業にとって、運用体制の整備と技術者の育成は、ローカル生成AIの効果的な運用を実現するために避けて通れないハードルとなっています。
③高性能ハードウェアの導入に伴う投資負担
ローカル生成AIは、社内サーバーなどといった自社内のハードウェア環境で運用されるため、クラウド型生成AIに比べて初期投資が大きくなる傾向があります。大規模な生成AIモデルを効果的に運用するには、高性能なGPUや専用ハードウェアが不可欠であり、これらの設備導入には高額なコストが伴います。
さらに、技術の進展に合わせたハードウェアの更新や保守、運用に伴うエネルギーコストなど、長期的な運用面での経済的負担も考慮する必要があります。このため、初期投資とその後の運用コストを十分に見極めた上で、導入計画を策定することが企業にとって重要なポイントとなるのです。
エムニでのローカル生成AI活用事例
様々なメリットがあるローカル生成ですが、ここでは具体的な活用方法として、弊社での事例を2件ご紹介します。
活用事例1:熟練工による暗黙知の言語化を支援するツール
製造業では、長年にわたり熟練工が培った技術やノウハウが暗黙知として蓄積されています。
しかし、その多くは各現場や一部の熟練者の中に留まり、十分に共有されていないのが実情です。弊社は、オンプレミス環境で運用される生成AIを活用し、熟練工の暗黙知を言語化するツールの開発に取り組んでいます。
このツールは、AIが熟練工に質問を繰り返すことで現場でのノウハウを引き出し、知識を整理・構造化してデータベース化する仕組みとなっています。これにより、各工場で個別に保持されていた暗黙知が、全体で共有できる形式知として体系化され、現場全体の技術の向上につながります。特に、経験の浅い新人技術者を効率的にサポートすることが期待されています。
さらに、オンプレミスで運用することで、機密性の高い現場データの外部流出リスクを大幅に抑えられます。そのため、企業は安心してこのシステムを導入できるというメリットがあります。
引用:生産現場が注目する「生成AI×オンプレ」の未来 何が導入障壁になり得るか
弊社代表の下野祐太は、
「各個人が持っていた暗黙知を工場全体、あるいは全国の工場でまとめることができれば、今まで言語化されていなかったノウハウを全体で共有できるようになる。技術者全体の“当たり前”のレベルを一段上げられるかもしれない。」
と述べており、今後の人材育成や技術伝承においても重要な役割を果たすと期待されています。
活用事例2:知財調査業務における生成AI活用
製品開発に関する知財調査は、専門家や自社法務部との連携が必要なプロセスです。
調査期間は数日から1カ月、費用は数万円から数百万円かかる大規模なものとなっています。エムニは、オンプレミス環境で運用される生成AIを活用し、知財調査業務の効率化とコスト削減に挑戦しています。
弊社の検証から、初めに生成AIで膨大な知財情報を解析し、その結果をもとに考察および再調査を行うことで、従来の調査プロセスを大幅に短縮できる可能性が示唆されました。
具体的には、調査時間が数秒から数時間程度に短縮することが出来、調査コストも従来の数万〜数百万円に対して数百円まで低減可能になったのです。
これにより、製品開発の初期段階から迅速かつ柔軟な知財戦略の立案が実現される新たな手法になり得ると考えられています。
引用:生産現場が注目する「生成AI×オンプレ」の未来 何が導入障壁になり得るか
この取り組みは、知財分野におけるDXの先駆けとして注目されていると言えます。
弊社のこれらの活用事例は、オンプレミス環境ならではの高いセキュリティ性と、製造現場や知財調査業務に特化した技術的工夫が実を結んでいる好例です。今後も、技術開発と運用ノウハウの蓄積により、製造業をはじめとする各分野の生成AI活用がさらに拡大していくことが期待されます。
これらの活用事例の詳細については、こちらのインタビュー記事にも掲載されています。こちらもぜひご覧ください。
参考資料:生産現場が注目する「生成AI×オンプレ」の未来 何が導入障壁になり得るか
その他のローカル生成AI活用事例
先ほどは、弊社におけるローカル生成AIの活用事例として、熟練工の暗黙知の言語化支援ツールと知財調査業務の効率化をご紹介しました。ここでは、その他のローカル生成AIの活用事例として他社の取り組みを一つご紹介させていただきます。
医師・看護師の文章作成業務に特化した生成AIの開発
医療現場では、診療行為以外の業務、特に入退院時の看護記録やカルテなどの作成が、医師や看護師の大きな負担となっています。これらの作成における業務負担軽減を目的として、佐賀県の小田病院では、「OPTiM AI ホスピタル」の導入が行われました。
このシステムを用いると、電子カルテに組み込まれたボタン一つで看護記録の要約が自動出力され、入退院時のサマリー作成が大幅に効率化されます。そのため、医療従事者は患者対応により注力でき、医療サービス向上にもつながることが期待されています。
セキュリティ面でも、オンプレミス環境で動作するため、外部へのデータ流出リスクを低減し、安心して運用できる点が評価されています。
参考資料:https://www.optim.co.jp/newsdetail/20240329-pressrelease-01
まとめ:安全性・効率性が支えるローカル生成AIの全体像とDX戦略
本記事では、ローカル生成AIの基本概念、日本企業が注目する背景、具体的なメリット・デメリット、そして実際の活用事例を解説しました。
ローカル生成AIは、高いセキュリティとカスタマイズ性、そして継続的なコスト効率の面で大きな利点を有する一方、運用面ではいくつか課題の課題も抱えています。
その課題に対処しながら、企業は生成AIへの技術的な投資と戦略的な導入計画が進められており、固有のニーズに柔軟に対応した生成AIが複数の企業で実装されています。
これらの活用事例がさらに広がっていくことで、今後のDX戦略がさらに加速することが期待されます。
エムニへの無料相談のご案内
株式会社エムニは製造業に特化したローカル生成AI導入支援やオーダーメイドAI開発なども扱っており、企業・団体様のニーズに合わせて無料相談を実施しています。AI導入などについて、疑問や不安をお持ちの方はぜひ一度お問い合わせください。