
SLM(小規模言語モデル)とは| 高速・効率・安全な生成AI
2025-03-22Llama3とは|同タイプのLLMの中でも最高水準の性能を誇る

Llama3は、Meta社が開発したオープンソースの大規模言語モデルです。
従来のモデルと比べ、学習データの規模やパラメータ数が拡大し、そして精度面の向上を実現している点が注目されます。さらにLlama3は、オープンソースとして提供されており、カスタマイズやオンプレミス環境での活用が可能です。
Llama3とは何か|15兆以上のトークンを学習した高精度LLM
冒頭でも軽く触れましたが、LlamaはMeta社が開発・公開している大規模言語モデル(LLM)です。2023年に最初のバージョンが公開されてから継続的にアップデートされています。
Llama3は2024年4月に公開されました。特に、Llama2との違いとして、約15兆以上のトークンでの学習や、翻訳・対話タスクでの高い応答精度が挙げられ、業界内外で高い評価を受けています。さらに2024年中にLlama 3.1 ~ 3.3までの新しいバージョンが公開されています。
Llama3は主に「8B」と「70B」という2種類のパラメータサイズで提供され、それぞれが用途に応じた最適なパフォーマンスを発揮できるよう設計されています。従来の大規模モデルと比較して、効率的な学習と推論が可能となっていることも大きな特徴です。
パラメータサイズが大きい方が精度がよいので大きい方だけで十分と思われるかもしれませんが、小規模な言語モデルは動作が早く、必要な計算資源の量が少ないというメリットを持ちます。
小規模言語モデルを利用するメリットについてはこちらの記事を読んでいただくと理解が深まるでしょう。
SLM(小規模言語モデル)とは| 高速・効率・安全な生成AI
Llama3モデルの種類|80億・700億のパラメータ数
Llama3は、用途や計算リソースに応じた選択肢を豊富に提供しています。以下の表は、各モデルの基本的な仕様や特徴をまとめたものです。
モデル名 | パラメータ数 | タイプ | 特徴 |
meta-llama/Meta-Llama-3-8B | 80億 | 事前学習モデル | コンパクトで高速な推論が可能 |
meta-llama/Meta-Llama-3-8B-Instruct | 80億 | 指示学習モデル | ユーザの指示に応じた柔軟な応答が実現 |
meta-llama/Meta-Llama-3-70B | 700億 | 事前学習モデル | 高精度な推論と多様なタスクへの応用が可能 |
meta-llama/Meta-Llama-3-70B-Instruct | 700億 | 指示学習モデル | 複雑なタスクへの対応力に優れる |
各モデルは、用途に合わせた最適なパフォーマンスとリソース効率を実現するために設計されており、その柔軟性が大きな強みとなっています。
8Bモデルは、エッジデバイスやモバイル環境など、計算資源が限られるシーンでの利用を意識しており、一方で70Bモデルは、より高精度な応答を要求される場面に適しています。これにより、ユーザーは必要に応じて最適なモデルを選択でき、幅広いユースケースに対応することが可能となっています。
事前学習モデルと指示学習モデルはどう違うのでしょうか。事前学習モデルは、大規模なデータで一般的な学習をした段階のモデルのことです。学習過程では次の単語予測やマスク予測(テキスト内の欠落させた単語やトークンを予測)を用いて常識や一般的なパターンを学習します。事前学習モデルを使うメリットは、ファインチューニングすることで多様なタスクに応用可能な点です。
一方、指示学習モデルは、主に事前学習モデルを基盤として特定の「指示」と「応答」のペアで学習し、指示に従った正確な応答生成に特化しています。追加の学習をせずにチャットボット等に活用したい場合は指示学習モデルを用いることになるでしょう。
Llama3の性能評価|182モデル中35位
Llama3は、その性能や柔軟性において、他の大規模言語モデルと比較しても高い評価を受けています。英語においてはGPT-4oと同等の文章読解能力を持つそうです。
Llama3の段階では学習データの95%が英語データ、5%が30以上の非英語データであったため英語以外の言語を用いた場合の性能は高くありませんでしたが、Llama3.1以降で多言語対応も強化されています。
Llama3.3では英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語、ヒンディー語、スペイン語、タイ語の8言語が公式にサポートされているようです。
日本語は公式にはサポートされていませんが、日本語でサービスを提供したい場合は、ファインチューニングやRAGなどの技術を用いることで、Llama 3.3を活用できます。後述しますが、エムニはLIama3の日本語対応に関する知見も豊富です。
なお、各モデル間での性能差は、利用するタスクやプロンプトの設定により大きく変動するため、実際の利用シーンに応じた評価が重要となります。使用モデルを選定する際には、競合モデルとの詳細な比較検証を通じて、最適なモデル選択が求められるでしょう。
下図はさまざまなLLMモデルの性能を評価しているサイト「Chatbot Arena」のリーダーボードより抜粋したものです。記事執筆時点では、Meta-Llama-3.1-405B-Instruct-bf16が182モデル中の35位に位置しています。
※2025年3月29日時点
この結果は、オープンソースのモデルの中ではかなりの高順位と言えるでしょう。上位にはGoogleのgeminiやOpenAIのChatGPTに加えて、近年注目されているxAIのGrokやDeepSeekがランクインしていました。
MAU7億人以下の場合に無償利用可能
Llama3は、「META LLAMA 3 COMMUNITY LICENSE」に基づいて提供され、商用利用が一定条件下で許可されています。
月間アクティブユーザー(MAU|Monthly Active Users)が7億人以下の場合に無償で利用可能となっており、ソフトウェアの改変や再配布も自由に行うことができる点が特徴的です。
項目 | 内容 |
商用利用 | 基本的に無償利用可能(前暦月に7億MAUを超えた場合は個別に申請が必要) |
改変・再配布 | 契約を守ることで自由に修正・変更が可能 |
著作権表示 | 再配布時に著作権や契約のコピーなどの表示が必要 |
特許利用 | 明示的な特許利用規定は存在しない |
Llama3のライセンスは、オープンな開発コミュニティの発展を支援するために設計されており、商用利用のハードルを低減しています。これにより、企業やスタートアップは独自のソリューション開発にLlama3を活用しやすくなり、技術革新が期待できるでしょう。
より詳細が気になる方は「META LLAMA 3 COMMUNITY LICENSE」をご確認ください。
Llama3を活用するメリット|機密情報を扱う場面で有用
最近ではGPTやgemini、Claudeなど優秀なLLMがいくつも存在しますが、Llama3を使用するとどのようなメリットがあるのでしょうか。以下でそのメリットについて大きく3つに分けて紹介します。
オンプレミス環境で利用可能
Llama3を利用する大きな利点は、オンプレミス環境への導入が可能な点です。これにより、インターネット接続がなくても、社内サーバー上で大規模言語モデルを運用できます。
特に、機密情報や個人情報を扱う業務において、データを外部に送信せずに処理を完結できることは、非常に重要な利点となります。
金融、医療、製造業など、厳格な情報管理が求められる現場では、その有用性が際立つでしょう。また、直接機密情報を扱わない場合でも、セキュリティ上の懸念からインターネット接続が制限される環境(工場や発電所など)は少なくありません。Llama3のオンプレミス環境での利用は、そうした環境下においてもLLMを活用できるという、大きなメリットをもたらします。
オンプレミス環境でのAI利用に関してはこちらの記事でも紹介しているので興味のある方はぜひご覧ください。
生成AI x オンプレミス|セキュアかつ柔軟なAI活用の実現
API利用料金の回避
Llama3をオンプレミス環境で運用すれば、API経由の利用料金を回避できます。通常のクラウドベースのLLMサービスの短所は、リクエストごとに従量課金が発生し、大量のクエリを処理する場合はコストが膨らんでしまうことです。
しかし、Llama3を自社のサーバー上で稼働させれば、処理回数に関係なく固定の設備投資のみで運用することができます。特に、継続的に大規模なデータ処理を行う企業にとっては、長期的なコスト削減が期待できるでしょう。
カスタマイズ性の高さ
Llama3は自社のニーズに合わせたカスタマイズが可能で、特定の業務や専門分野に特化したモデルを構築できます。例えば、社内文書や専門的なデータを追加学習させることで、より精度の高い回答を得ることが可能です。
クラウドベースの汎用AIと異なり、独自のデータセットを活用して微調整を行えるため、業務に最適化された応答を実現できます。また、特定の業界用語や社内ルールに基づいた出力が可能になることで、情報の一貫性が向上します。
さらにモデルの振る舞いを細かく制御できるため、安全性やガイドラインに適した形で運用することができ、LLM活用の幅を広げることができるでしょう。
エムニの事例
ここまでLlama3の概要や活用するメリットについて紹介してきました。以下では具体的な活用事例について紹介します。
異常事態対応チャットボット|解決策提案を自動化
原因特定サポートチャットボットはAIの力を借りて異常発生時に迅速な対処を実現します。以下の図はその概念図です。
例えば、工場内で故障頻度の低いとある機械が故障し、その場にいる作業員が誰も対処方法を把握していない場合、対処方法を検討するために多くの時間と手間を要するでしょう。
そういったトラブル発生時にこのチャットボットは自然言語での高速な検索を可能にします。異常内容と知りたいことを入力することで、過去事例とマニュアルの情報を含むデータベースと連携したAIから的確な回答を得ることが可能です。質問者にAIやITに関する特別な知識は必要ありません。
さらにLlama3を用いてチャットボットを作成すれば、セキュリティ管理の厳格な工場内でも使用可能です。このチャットボットを導入することで異常対処が迅速にできるようになり、生産性が向上するでしょう。
特許翻訳AI|調査コストを1000分の1に
エムニでは特許翻訳に特化したLLMを独自で開発しました。Llama3をベースに独自にカスタマイズとファインチューニングを何度も重ねることで、OpenAIが開発した汎用モデルのGPT-4oや、Google翻訳など汎用モデルを超える翻訳精度を達成しています。
この特許翻訳AIを活用することで圧倒的なコスト削減が可能です。外国の特許文書の調査を依頼するとなると多くの場合、外国公報一件当たり10万円ほどの費用がかかりますが、エムニの開発したモデルを使用すると、一件当たり数十円まで抑えることができます。
また特許翻訳AIについて気になる方はこちらの記事もご覧ください。
特許翻訳にAIを導入するメリットを事例付きで詳しく解説
引用: 【京大発・松尾研発スタートアップ エムニ】ファインチューニングを用いた特許翻訳特化型LLMの開発において、GPT-4oや翻訳モデルを凌駕する性能を達成
まとめ
Llama3は、高性能な言語モデルとして多くの場面で活用でき、オンプレミス環境での運用やコスト削減、柔軟なカスタマイズが可能です。これにより、企業や研究機関は自社のニーズに最適化したAIを構築し、業務効率の向上や新たな価値創出を実現できます。
特に、セキュリティやプライバシーを重視する場面でも有効で、安全なAI活用が可能です。今後もLlama3を活用した技術革新が進み、多様な分野での利用が期待されます。適切に導入・運用することで、より効果的なAIソリューションの構築を進めて行きましょう。
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エムニでは、製造業に特化したAI導入の支援を行っており、企業様のニーズに合わせて無料相談、無料デモ開発を実施しています。AI導入の概要から具体的な導入事例、取引先の事例など、疑問や不安をお持ちの方は以下のフォームからぜひお気軽にご相談ください。